ロンメルの伝説、地中海の制空権&制海権が及ぼした影響
★★★★☆
本書は過去の歴史群像の記事から第2次世界大戦における北アフリカ戦線に関するものを抜粋してまとめたものである。同じような記述があちこち重なってしまっているのが惜しまれるが、内容の濃い一冊になっている。全編白黒印刷。
最初の章では、アフリカ戦線で口火を切ったイタリア軍の、情けないとしか形容のしようがない敗戦ぶりとその原因が明らかにされる。
次の章からの一番の主役はエルヴィン・ロンメル将軍だ。対峙するイギリス軍に対して数量で圧倒的に劣り、貧弱なイタリア軍も引き受けながら、神がかり的な戦いを展開する様子とその強さの秘密について解説されている。後半は、皮肉屋で合理主義者のモンゴメリー将軍や、「わが方のイタリア軍」と英軍から酷評されていたアメリカ軍を立て直した猛将パットンが登場する。
もはや物量の面で太刀打ちできなくなったドイツ軍が苦しい状況に追い込まれていく中で、チュニジアでは指揮系統の混乱が作戦遂行に大きな障害になった点やそのいきさつも的確に説明してある。
本書で一番印象に残ったのは、マルタ島を中心とした地中海の制空権&制海権をめぐる戦いの解説だ。この優劣が北アフリカ戦線の補給や制空という形で戦場に大きな影響を与えたことがよくわかった。ちなみに、ここでも本来軍艦の数で数的に優位だった筈のイタリアのふがいなさが目立つ。
読み終えて実感するのは、ロンメルが指摘していたように、砂漠の戦いは「海戦」との類似点が非常に多いということだ。砂漠は海と同じでそれ自体の占領価値はなく、広く、砂嵐が無ければ見晴らしも良い。迂回作戦が可能な範囲も広く、空からの攻撃に対して隠れるのは難しい。明らかに数的不利な状況に置かれた側にとっては、電撃的な奇襲攻撃こそが最大の防御になりうる。
尚、「アフリカの星」と呼ばれた撃墜王、ハンス・マルセイユの記録もある。