これが1位とは
★★☆☆☆
ミステリー=娯楽作品だという思い込みがあったので、ひたすらゴシックミステリーを楽しみにしていたのにそれとは程遠い作品でした。
他のレビュワーの方が書いている翻訳に問題がある、というのは読み終わった後ではそうかも、と改めて思いました。読んでいる最中は舞台が昔のイギリスだからなのかな、と思いつつ読んでいましたが、もしかしたら翻訳が不自然でストーリにのめり込めなかったのかも。。。
読んでカタルシスを感じたい、という人にはおススメしません。
スゴイです
★★★☆☆
19世紀を生きる、主人公の内面を描いた物語です。
ミステリーではないと思います、たぶん。
とにかく痛い、身につまされるお話です。
おそらく今より相当生きづらかったであろう、一昔前の年女の鬱屈した想いが
じっくりたっぷりと執拗に語られます。
私は「あ、これはラブストーリーなのね」と思い込み、主人公に感情移入をして読んでいたので
あまりにも救われない結末に、なにやら思いっきりヘコんでしまいました。
同性愛の描写が出てきますが、その気のある方は読まないほうが無難かも……生々しい描写が売りなだけに、作者に弄ばれた気分になります。
逆にそんなの全く理解できないという方には、いまいちピンとこない話でしょうし、難しい作品です。
19世紀当時の時代を緻密に描いた筆致は見事の一言です。
雰囲気に酔えれば傑作、じゃなければ駄作
★★★★☆
本を読むことがそう好きじゃない人にはつらいかも・・・だって長いんだもん。
しつこいまでにページを使って描かれるのは、イギリス19世紀、ヴィクトリア時代の古く暗く、重い雰囲気。この空気を作り上げるために、しつこいくらい冗長に、主人公の老嬢・マーガレットの生活と心の機微を描写しているんだと思う。なぜなら、この時代の、この雰囲気の中でなければ、これは成立しない話だから。
雰囲気に酔うことさえできれば、ラストを驚愕とともに迎えることができる。逆に酔えなければ、「何この話。オチはこれ?」ってなってしまうと思う。
物語世界に入り込み、作者の手腕にだまされてほしい。
荒野に遺棄された心
★★★★☆
物語は飽くまで暗く陰湿で、家や因習に囚われた主人公が同じように監獄に囚われている女囚と心を通わせるという、いかにも英国人好みの場面設定であり道具立てである。夜中に良家の令嬢が監獄の中を囚人の慰問に歩き回るという設定は多少無理があるだろう。ミステリーは作者が登場人物を通して読者を欺くことが本質であるが、このような騙し方もあるのかと嘆息する一方、索漠、荒涼とした読後感は米国のミステリーなどでは味わえないものだ。全体が登場人物の日記からなっており、読者としては感情移入するしかなく、事実を心に留めて謎解きをするとういことはできない。人間とはこんなものだったのだと思い知らされる小説である。
この若さでこの筆力
★★★★★
ミステリファンからはあまり評判の良くないこの本だが、私は正直言ってかなり気に入っている。
ヴィクトリア朝ロンドンの刑務所の空気が繊細な描写でリアルに書き込まれている。
本当に刑務所内のすえた臭いが漂ってくるようだ。
ラストがどうとかというよりも、当時のロンドンの空気に触れることが出来ただけ幸せである。
途中で描かれる闇房の恐ろしさは圧巻で、拘束衣を着せられてあんなところに閉じ込められたら、俺なら一日で発狂してしまうだろう。
オカルトであり、恋愛小説でもあり、歴史小説でもあり、ミステリでもあるこの本に作者のなみなみならぬ才能を感じてしまう。