ケントン・ガールズという言葉がある。スタン・ケントン楽団出身の女性シンガーを意味する言葉で、アニタ・オデイ、クリス・コナー、ジューン・クリスティの3人が特に有名だ。ケントン楽団は知的で洗練されたサウンドが特徴で、その影響を受けたケントン・ガールズの歌声もハイブロウな魅力に包まれている。クリスティは特にその感が強く、ハスキー・ヴォイスの魅力、クールな語り口、知的で清楚なたたずまいがなんともいえずいい。
本作は誰もが認める彼女の最高傑作。アレンジを担当したのはピート・ルゴロ。クリスティとルゴロは1940年代半ばにケントン楽団で一緒だっただけに、気心が知れている。クリスティの持ち味を存分に引き出したルゴロの斬新なアレンジもまた本作を成功に導いた一大要因といっていい。曲は大半がスタンダード。
なおこのアルバムは2年ほどの間隔をおいて録音されたモノラル盤とステレオ盤の2種類があり、微妙に歌声が異なるが、ありがたいことに本作には両方のバージョンが収録されており、聴き比べの楽しみもある。(市川正二)
耳で涼める歌声
★★★★★
1953〜55年録音。ジャズ・ボーカルの定番中の定番として、入門者には必須科目とも言える一枚。
何故かジャズ・ボーカルの名盤には名ジャケットが多い。ボーカルものに入門し定番のサラ・エラといった黒人女声ボーカルの
有名ところをさらった後、もう少しアクの強くない、さらっとしたボーカルものを探していた時にどんぴしゃ自分のストライクゾーン
に嵌った思い入れある作品だ。まず青を基調にした爽やかなジャケットに微笑む美人、俄然中に詰まった音楽を知りたく購入し
たら中身は想像以上の素晴らしさ、いわゆる「ジャケ買い」してもまず間違いなく期待を裏切らないだろう傑作だ。
ジューン・クリスティはスタン・ケントン楽団という実力派バンドの専属シンガーの経歴を持ち、バンドのアイドル的存在だったよ
うだ。その可憐なルックスに加え、ハスキーで知的な味わい、そしてどこか崩れ落ちそうな繊細さを湛えた歌声は他の凡百の歌
手達と一線を画す魅力を備えている。本作はバンド解散後彼女が独立し大手レーベル・キャピトルと契約後間もない作品であり
、バックは一貫してオーケストラが担当しピート・ルゴロの機知に富んだ編曲が冴えわたっている。
冒頭の「サムシング・クール」は彼女の生涯の代表曲ともなった名唱。彼女の語り口は作品題然りひんやりとした感触があり、耳
に何とも言えない心地良さを提供する。それは感情的に冷たいという意味ではなく、クールな中にもしっかりと感情の起伏を感じ
させ、それでいて決してべたついた表現にならないという絶妙なもので、まさにモダンの極みを体現したような歌声。
他にも「ミッドナイト・サン」「朝日のようにさわやかに」等ルゴロのユニークなオーケストラ編曲とジューンの声が好ましい科学反応
をおこしている名唱揃い。これから暑くなる季節、聴き手の体温も感情もクールダウンさせてくれること請け合いだ。
今にはない雰囲気がなんともいえません
★★★★★
昔々、JAZZの名盤とかいう多分スィングジャーナルの別冊みたいなものを持っていたことがある。そのときに「サムシング・クール」という覚えやすいアルバム・タイトルとなんとも言えない魅力的なジャケットがずっと何年もの間僕の記憶の中にとどまっていた。先日その記憶が甦り、これを買ってみる。不思議な気持ちである、何年も前から知っているはずのような気持ちになる。ジャズをほとんど知らない僕でも「朝日のようにさわやかに」は知っている。あ〜この人の歌だったのかと変に感無量である。このCDは面白いことにモノラル盤とステレオ盤がペアになっている。同じ編成のレコードが2年後にもう一度録音されたというのも今では思いつかない話である。聞き比べるのも一興なんでしょうが僕にはあんまり分かりません。どちらもいい出来のような気がします。
愛聴盤に加えておきたい
★★★★★
何気なく購入したCDであったが、聴いてみて顔がにんまりとしてきた。特にトラック5に入っているThe Night We Called It a Dayが気に入った。Christyが曲の途中で短いけれどハミングするところが2度ある。物憂い雰囲気が漂ってきて胸に迫る。こんな音楽に出会うと人生が幸せになってくる。愛聴盤に加えておきたい一枚だ。
クリスティー、ただ一枚の名盤
★★★★★
スタン・ケントン楽団のヴォーカリストだったジューン・クリスティのただ一枚の名盤。かわいいクールな声の歌手だが晩年は恵まれなかったそうだ。エラ、サラ、白人だったらヘレン・メリルなどの大歌手の陰で、わずか1枚のアルバムを残して消えていった女性歌手はクリスティーに限らず多い。そんな裏話を思い浮かべつつ聴くと少しブルーになる。ともあれ、表題曲以外のどの曲もいい。毎日ではなくとも、時々取り出して聴きたくなる一枚。(松本敏之)
クリスティー、ただ一枚の名盤
★★★★★
スタン・ケントン楽団のヴォーカリストだったジューン・クリスティのただ一枚の名盤。かわいいクールな声の歌手だが晩年は恵まれなかったそうだ。エラ、サラ、白人だったらヘレン・メリルなどの大歌手の陰で、わずか1枚のアルバムを残して消えていった女性歌手はクリスティーに限らず多い。そんな裏話を思い浮かべつつ聴くと少しブルーになる。ともあれ、表題曲以外のどの曲もいい。毎日ではなくとも、時々取り出して聴きたくなる一枚。