メンバー各々の音楽的趣向をバランス良くまとめた作品
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68年発表の2nd。シングルでもヒットしたニール・ダイヤモンドの3.やアイク&ティナ・タナーの7.ビートルズの4.の後半などカヴァーが多い点は前作を踏襲しているものの、演奏そのものは更に磨きが掛かった印象を受ける作品。作風としても前作のアート・ロック路線を踏襲しており、オーケストラを導入した6.やシュトラウスの曲をイントロで引用した7.などがその点で象徴的だが、ジョンとリッチーによるインプロを導入したインストの2.など後のハード・ロック的な要素も多分に登場している。サイケ・ポップ調の1.からこの2.へ移る様は一瞬目が覚めるほどの躍進であり、メンバーの音楽性の決定的な違いが見れて非常に楽しい。サイケ・ポップ/アート・ロックの作品としてもかなり楽しめる作品であり、それらの平均的なレベルからは大きく抜きん出ていると思う。サイケ的なオルガンの好きな人には特にお薦めだし、プログレ・ファンには6.のメロトロンもたまらないと思う。本作は様々なエゴを含みながらもバランスを保ち、結果として渾然一体となった第一期の集大成とも言える作品かと思う。次作以降は『イン・ロック』に至るまではジョンの趣向が強く出てくる。
「アート」・ロック色が強まった2作目
★★★★★
パープル・レコーズの国内販売権がvapからVictorに移ったことにより、紙ジャケk2HD MASTERINGで22タイトルが再発となった。
本作は、デビュー作からわずか半年あまりで製作されたセカンド。タイトル、ジャケットともに、より「アート」(?)ロック色が強まっている。
「イン・ロック」以降のファンにとっては、ますます敷居が高いだろう。
しかし、内容は前作同様水準が高い。
今回もビートルズ・ナンバーをカバーしているが、「ヘルター・スケルター」ならともかく「恋を抱きしめよう」(笑)である。
ところが、第U期以降のイメージを捨てて聴くと、けっこうおもしろい。
ヴォーカルのロッド・エヴァンスは力量不足で解雇された、ということでファンからは評価が低いが、その「トム・ジョーンズ」的スタイルが後のハード・ロック・スタイルにフィットしなかったというだけで、この曲のようにブルージーなテイストでは魅力を発揮している。
ニール・ダイヤモンドの「ケンタッキー・ウーマン」はいただけないが…
傑作「ハード・ロード(リング・ザ・ット・ネック)」も、本アルバムがオリジナルだ。ボーナスでBBCのスタジオ・ライヴも収められてある。
全体的に、後のハード・ロックの先駆となる演奏と、ジョン・ロードのクラシック趣味の演奏と、二つの芽が共に少しずつ成長して、双葉を出している感じ。
本アイテムは、k2HD MASTERINGを施してはいるが、前回のvap発売内容とほとんど同じ(ライナーも使いまわし)なので、そちらをお持ちの方はわざわざ買い替えの必要はないと思うが、以前のワーナー・パイオニア盤しかお持ちで無い方は、ボーナス・トラックもあるし音質も向上しているし、買い替えを検討すべきと思う。
また、今回のシリーズは、すべて厚紙でジャケットを作製しており、製作者側のアーティストに対する愛情が感じられる
ただ、酒井康氏のライナーは勉強になるが、できればボーナス・トラックについてのもっと詳しい情報(ラジオ・セッションの場合は録音日や放送日など)が欲しかった。