新しいミクロ経済学入門
★★★★★
担当編集者の方が本書のコンセプトは
「契約や組織の経済学,オークション,政治経済学の話題など少しずつ含めて,幅広く紹介し,初学者に経済学のおもしろさと有用さを知ってもらう」
ことである、とおっしゃっていましたが、まさにそのコンセプト通りの内容となっています。初級レベルとは思えないほど市場分析以外のトピックに紙面が割かれており、類書との明確な差別化に成功しています。
具体的に言うと、全15章のうち完全競争を仮定した(狭義の)市場分析は最初の5章のみと全体の3分の1に過ぎません。それ以外は不完全競争をはじめ、組織の経済学、規制の経済学、公共経済学といった、従来の入門テキストで省略されがちなトピックに詳しい解説を与えています(そしてこういったトピックの分析に活躍するツールがゲーム理論です)。
既に大学院教育ではミクロ経済学の半分近く、あるいはそれ以上を上述したトピックが占めるに至っていますが、その流れがいよいよ本格的に学部教育にも浸透しつつあるのかもしれません。
新しいミクロ経済学の流れに触れたい初学者の方はもちろん、学部ミクロ教育の改善を目指す先生方にも参考となるような1冊ではないかと思います。私自身もちょうど今学期はミクロ経済学(大学院レベルではありますが)を教えているので、どのトピックをカバーするのかに関して本書を是非参考にさせて頂きたいと思っております。