JBL4343で聴いて欲しい
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このアルバムに始めて出会ったのは30年前。お金の無い高校生でしたが道玄坂のジャズ喫茶で初めて聴いてぶっ飛びました。早速、レコードを買って家のステレオで聴いてみると「あれっ?」 当時、レコードのライナーノーツには「住宅事情の許す限り大音量でお聴き下さい」と書かれていましたが、音量だけでなく、どんなセットで聴くかで印象は180度違うと感じました。 道玄坂のジャズ喫茶にはJBLのスタジオモニター4343が鎮座していて、恐らくこのスピーカーはマイルスを聴くために作られたのではないかと思えるほどツボにハマってました。当時の自宅のセットはサンスイのアンプとダイヤトーンのスピーカー。ソコソコは鳴ってくれましたが、70年代マイルスを聴くには明らかに「違う」というもの。音量云々の問題ではありませんでした。 そのジャズ喫茶も潰れてしまった今日は、家でJBL4344(4343の後継機)とマッキントッシュのアンプを購入し聴いています。結構いいセンいってますが、それでも、学生時代に聴いた鮮烈な印象とは異なり、やっぱり4343の硬質なトーンが70年代マイルスにはマッチしていると感じられます。 このアルバムは、そのくらい聴くオーディオ・セットで印象が異なるもの。中途半端なオーディオ・セットで聴くなら(又は、大音量が難しい住宅事情であれば)、むしろ、低音までの再生能力のある高級なヘッドホンで聴くことをお薦めします。この場合も難聴にならない範囲できる限り大音量で…。
感電・シビレ、脳トレ、禁断症状、恐るべし!
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1975年大阪フェスティバル・ホール実況録音、横尾忠則デザインのジャケットなので、これは輸入盤ではなく日本盤をと思い、2000年のCDを遅ればせながら2009年に購入。これは昼の部 "Agharta" (アガルタ)、夜の部は "Pangaea" (パンゲア)、因にスイングジャーナルが選んだのは前者。ライナーノーツにはLPレコード発売時のオリジナルと「マイルス・デイビスと語る」もあり、マイルスの秘密(でもないか?)や考えなどが色々わかって、期待以上に楽しめた。
LPの収録時間に収まらずカットしてフェイドアウトしていた?ラスト部分が、このCDには含まれているのでDisc 2は 60分56秒 (輸入版CDは51分53秒=26:22+25:31構成?)。マイルスがステージを降りた後もメンバーがそのまま続けた演奏らしい、このラスト部分は記録としては貴重だが、正直言って私の好みではない。
LPには「住宅環境の許す限り、ヴォリュームを上げてお聴きください」と書いてあったらしいが、特にベースの音がそれなりに鳴るスピーカーで聴きたい。
音楽・演奏は、すごい、かっこいい、超越している、ジャズとかロックとかジャンルはどうでもよく、そういうのを超えたマイルスだ。彼が演奏していない間にも漂う気配、存在感、オーラ。感電して痺れて、聴けば聴く程一種の脳トレになって音楽に対する理解度・感度が上がり、また不思議な禁断症状がやってくる。
マイルスの "Kind of Blue" 他多数の5つ星傑作群の中では4つが妥当と思いつつ、ライナーノーツのインタビューが気に入ったので +0.5、よくぞ大阪で貴重な記録を残してくれた感謝で +0.5、結局5にした(笑)。。。
禁断症状と言えば、30年程前に衝動買いしたLPレコード "Bitches Brew" は、当時の私には早過ぎた感があったが、これも不思議な禁断症状があり、最近CDを購入、"In a Silent Way" も同様。禁断症状は、少年の頃ビートルズやストーンズで経験したが、それとは別次元の感じ。今、この "Agharta" + "Bitches Brew" + "In a Silent Way" がグルグル回って、時折、おまけと言っては何だが "On the Corner" が入り込んでくる。はまってしまったか。。。さらに、"Agharta" の途中でベースがちょっとだけ "So What" をやっていて、それが気になると、今度は、"Kind of Blue" や "Four & More" で "So What" を無性に聴きたくなる。マイルス、恐るべし!
フリーフォーム
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大阪フェスティバル・ホールで行われた
空前のカオス的音響世界!
そして電化マイルスの集大成!
ジャズやファンクやロックなどのジャンルの垣根などは完全にこの混沌とした空間に放り込まれ
現代音楽の「曼荼羅」絵巻が怒涛のように
繰り広げられる!
ピート・コージーのジミヘンばりの
いやジミヘン異常にフリーキーで(師匠だから)
天空を劈くようなフリーフォームな
プレイを初め、終始異常なテンションが空間を支配している!
レジー・ルーカスのリズムギターもガッチリ締め
エムトゥーメやアル・フォスターのリズム隊も終始アグレッシブ!
これはマイルスの金字塔的作品
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当時高校生だった私は友達と授業をさぼり、
このアルバムの収録された大阪フェスティバルホールに高揚した精神で臨んだ。
むろん、「On the Corner」「In concert」「Get up with it」といったこのコンサート直前の
数年間のアルバムも擦りきれるほど聴いての出陣だ。
幕が開く前に、マイルスの弾くオルガンの不協和音が強烈に会場に響く。
そこで聞こえてきたサウンドは、上記のアルバムとはまったく違う音楽だった!
Miles、凄い!と叫んだ記憶がある。
このバンドの構成の重要な部分を担っているのは、
マイルスが「あいつはマスターだ、俺が教えることはなにもない」といった、
ジミ・ヘンドリックスの”師匠”である、ピート・コージーだ。
6弦と12弦のギター+シンセサイザー、パーカッションを操り、
マイルスのアドリブの後を0.3秒遅れくらいで同じフレーズで追っかけてみせる
ピートはやはり凄い。
この日の夜の演奏を納めたパンゲアも同様に素晴らしいが、
どっちかというとこのアガルタの方が、個人的には好きだ。
老いた、くだらぬ評論家どもが難癖をつけていたマイルスのサウンドに
若い感性は、それらをせせら笑いながら、ぐいぐい引き込まれていた。
アイビールックで極めた大人のジャズファンが驚きの目で見る中で、長髪をなびかせて
颯爽と席に着いた思い出も懐かしい。
横尾忠則のジャケット(日本版のみ)もイカしている素晴らしいアルバム。
怒濤の曼陀羅音空間!
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もはや語るべき言葉もないほどの圧倒的な日本公演(大阪)の記録です。
この曼陀羅のようなのたうつ音響世界は、ピート・コージーの力量に負うところが多いようですが、果たしてコージーのサウンドシステムがどうなっていたのかということを書いてみます。
○ギターの扱い
6弦ギターと12弦ギターを使い分けているようです。12弦ギターでソロを弾くことによって、あの分厚い音が生まれているわけですが、そのほか、VSCシンセサイザーを通してエフェクター的に使うことによって、あの独特のうねりが生まれるようです。
○シンセサイザーとリズムボックスの大幅導入
○小物パーカッションの効果的な使用
というところであろうと思われます。
当時のコンサート評を読んでみると、とある高名なジャズ評論家の先生は「マイルスのステージマナーが悪すぎる」「観客とのコミニュケーションがとれていない」という、かなり悪意のある文章が躍っています。
まぁしかし、ジャズミュージシャンが観客とコミュニケーションをとってライブを楽しく演出しているのを、私は寡聞にして知りません。気持ちよさげにニヤケ面で演奏しているミュージシャンの演奏が素晴らしかったとか言う例も知りませんし。楽しいのは演奏者だけというジャズのなんと多いことか。。。
ステージマナーについても、じゃあセロニアス・モンクやソニー・ロリンズはマナーが良いのか?という話でしかありません。
こういった論評が飛び出す当たり、すでにマイルスの音楽は好きとか嫌いとかを超えて、観客を畏怖させる世界に突入していることを示します。