カレーライスのあれやこれやをまとめた気軽に読める一冊
★★★☆☆
日本のカレーライスの名店や、様々な日本のカレーの開発史、亀田のカレーせんべいや永谷園のカレー鍋といったカレー関連商品の裏話など、カレーに関する項目50をそれぞれ1〜2頁の紙幅で綴っています。
私もカレーはもちろん大好き。30年ほど前に大学生だった時、名古屋の地下街のカレー店で1カ月バイトした経験がありますし、この本に載っている新宿「カフェ・ハイチ」のドライカレーも評判を聞いて食べに行きました。ボンカレーやカップヌードル カレーには若い頃何度かお世話になりました。COCO壱番舘、時々ですが行きます。松屋ではカレギュウは食べないけれどオリジナルカレー野菜セットは今でもちょくちょく食べます。オリエンタルのカレースプーン、昭和40年代から使っています。
そんなことを考えながら頁を繰ると、ノドの奥に香辛料の味と香りがパーッと広がる思いがして無性にカレーライスが食べたくなります。
それにしても本書を読んで思いが至るのは、カレーという舶来食が日本に広く深く根を張るまでの歴史の面白さ。
レトルト食品は当初その保存性が問屋に信じてもらえず、「ボンカレー」の営業マンたちは小売店に直接売り込みをかける努力を強いられたのだとか。今でも地方に行くとかろうじて目にするあの松山容子のホーロー看板は、営業マンたちが小売店周りの途上で1日15枚貼ってもらうようにノルマを課せられていた代物だそうです。
そんなトリビアがいくつも登場してなかなか興味深く読みました。
ひとつ指摘しておくと、「よこすか海軍カレー」に代表されるご当地カレーを紹介した章で、1990年代末「日本国内を見渡しても、食による町おこしという事例はほとんどなかった」(177頁)というのはいくらなんでも言いすぎ。
須磨章著「蔵の夢」(三五館)を読むと、喜多方ラーメンが町おこしのために開発されていった食であることがよくわかります。