新規事業を手掛けるなら必読
★★★★☆
経営コンサルタントが本を書いたり、海外の本を翻訳したりするのは、大抵はコンサルテーションの販売促進が目的です。ですから、著書で秘訣をすべて公開なんてしません。でも、この本は違います。
新規事業を行なう前に検討しなければならないことで、著者が他の研究者から学んだものの殆どを紹介していると思います。独創性は少ないかもしれませんが、代わりに教科書として使えます。新規事業を手掛ける前に何冊か本を購入されるなら、この本を必ず加えるのが良いと思います。
もちろん、何から何まで何も考えずに使えるようには書いてありません。逆に、書いてあることを消化して、自分で考えられる人にはとても役立つ本だと思います。著者がうっかり書いてしまったのかもしれないヒントがたくさんあります。なお、この本はBMO法の紹介以外はほぼ The Entrepreneurial Mindset からの引用です。
企業の新規事業開発部門の実践的ノウハウ本の第3版
★★★★☆
企業の新規事業の推進に必要な考え方とツールをまとめた本である。これらは、著者の長年のコンサルティングや企業との研究会での経験がベースになっており、実践的なノウハウが参考になる。また、本書は1998年に出版された本の第3版であるが、今回はツールやデータの大幅な見直しと更新を行ったとのことである。
本書の初版からのメインコンセプトは「仮説のマネジメント」である。新規事業は企業にとって不確実性が高いので、その企業の通常のビジネススタイルではダメで、「(1)仮説を作り、(2)仮説を検証し、(3)仮説を管理する」というPDCAサイクルが重要性であると主張している。
そのPDCAサイクルをまわすツールとして、「レベルマップ」、「3×3新規事業マトリックス」「アトリビュートマトリクス」「STAR法」「BMO法」「ACE分析」などのツールを導入している。
評者は、企業の新規事業を困難にする大きな要因の1つに「組織的ギャップ(関係者の認識や慣行のギャップ)」があると考える。上記のツールは、これを使えば必ず成功するという魔法の杖ではない。しかし、ステークホルダー間の認識ギャップを埋める見える化ツールとしては有効である。特に、新規事業チームの意識ギャップを測定するACE (Accelerating Competitive Effectiveness) 分析は、今までになかったもので有効であると感じた。
第3版ではあるが、完成度の高い教科書というよりは、著者の実践的経験を反映し、日々更新されている進化型の実践書と考えるべきであろう。
新規事業評価の手引書
★★★☆☆
新規事業開発に関しては目ぼしい書籍があまり見当たらない中で、この本は事業の事前分析・評価について比較的丁寧に説明しており、入門書としては良心的だといえる。ただ、タイトルにある「なぜ新規事業は成功しないか」という問いに対する答えが、「試行錯誤が多いということ自体が失敗の可能性が高いことを意味している」であるように、乾いた一般論が多く、全体的にメリハリが乏しい。事業立上げの経験をした事がない人が書いた新規事業論、という印象。
実務に携わる人間には不要な書
★☆☆☆☆
新規事業のアイデアをどう評価するかは書かれているが、
新規事業をどう発想するかの記述は皆無と言って良い。
分類の仕方、評価によるランク分けの手法などが紹介されており、
一見整理されている様に感じるが、
ただ整理されるだけで新規事業の成否に関わるような
示唆に富んだ内容ではない。
具体性に乏しく実務に役立つかについては懐疑的な内容。
新規事業解説の決定版
★★★★★
新規事業をさまざまな視点から解説しており、理解しやすい。
本書は新規事業の失敗例や成功例から何かを学ぼうという趣旨でなく、
新規事業を実際起こしている人または実際計画している人が
どのような点に留意して新規事業を実践していたら良いかという
ビジネスサポート本的要素が強く、新規事業を企画、実践する人には最適。
また紹介されているどの手法も実践的で利用しやすい点も評価。
本書はハーバードビジネスレビューにも登場するマクミランなどの考え方を
より日本の市場に合わせる形で編集されているという点でも大変興味深い。
新規事業を実践するまたは企画している人は考えるヒントに是非一読を。