一石を投じる
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約10年前にコーチングの素晴らしさをいちクライアントとして身をもって体感した時から、コーチという仕事(職業)が日本でも健全に普及していくことを願っていました。しかし、残念ながら、きわめて表面的な質問などのテクニックだけに終始しているようなセミナーや書籍が散見されるのが、昨今の情勢です。
もちろん、人間の本質に関する深い洞察力を持ったコーチも大勢いますが、それ以上に、にわかコーチ(なんちゃってコーチ)が多いのも事実です。
その観点からも、今の日本のコーチング界に一石を投じる内容の書籍がやっと日本語版として発行されたという感じです。
今後、日本でコーチという仕事が社会に正しく認知されるためには、プロコーチと名乗る人がコーチ養成機関でどれだけのトレーニングを受けたかという定量的な指標だけではなく、定性的な能力を測れる指標(定性的なものを定量的に変換)があった方が良いと思います。コーチの力量はクライアントの意識や行動がどれだけ変容したかというのも事実ですが、クライアントがすべてプロテニスプレイヤーではないことも事実です。
本書は、認知言語学等をベースに、メタ認知的フレームワークとしての自己実現モデル、メタ・ステイト・モデル、マトリクス・モデル、さらには変化軸モデルなど、よりシステミック(全体論的)な観点からコーチングのスキルやその構造が順序立てて記述されています。
さらには、コーチングの成果、改善を図る指標として、コーチングのためのベンチマーキングについても詳細に説明されています。
すでにプロコーチとして活躍されている方々はもちろん(よりメタなポジションで)、これからコーチングの勉強を始めよう、コーチングを受けてみようと思われている方にとっても有益且つ誠実な内容の書籍です。