読後の爽快感が続く
★★★★★
鮨職人新吉が主人公。
旗本勘定方祐筆・小西秋之助や親友の魚の棒手振り順平その他に支えられて、思案・工夫しながら商いをしていく姿が小気味よく描かれている。 小西秋之助は今時珍しい程の清廉潔白の侍として理想的に描かれているが、余り違和感はない。 親友の魚の棒手振り順平は、彼の心意気に惹かれるものがある。 最後は紆余曲折を経て、新吉が順平の妹と、順平も縁ある女性と結ばれて目出度いお話で終わる。 何れにしても、読者に元気を与えてくれて更に爽快感を残す、著者会心の作ではないでしょうか。
いつもながらの一力さん
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今回は柿(こけら)鮨職人、舞台はいつもの深川界隈。鮨職人の新吉を主人公に大身旗本の家来の秋之助、魚の棒振り順平など多彩な登場人物が物語を盛り上げていく。一力ファンなら間違いのない1冊。
茶
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「茶の葉を惜しまずに、たっぷり急須にいれた。そして、沸き立った湯を注いだ。玄米の香ばしさが土間に漂った。」別論を要さず。
さて心意気を表すならば、お江戸には何がなければならないか。意地の張り具合。へその曲げ具合。それが適度であることでしょう。
読んでいて爽快感を感じる小説
★★★★★
江戸時代の鮨職人を題材にした本です。その題材を通じて描かれているのは、仕事を追及する人間の姿であり、友情であり、仕事を通じた人間関係であり、はたまた恋愛でありと、現代と変わらぬ様々な人間模様です。ドロドロした関係ではなく、あくまでも爽やかに、筋の通った、でもそれ故時には損もする、そんなちょっと不器用な人間が描かれている感じでした。でも単純に義理人情で押し通すのではなく、時にはビジネス的観点からドライに、両者を上手く織り交ぜながら描かれており、時代の異なる我々の生き方の参考にもなる印象でした。そんな登場人物を見ていると勇気付けられます。読んでいて爽快な読後感を味わえます。
結末は心地よい
★★★★☆
私にとって初の山本作品がこれ。
文章力はそこそこあり、読んでいてストレスはたまらなかった。
物語についても展開に無理は無く、山本先生の世界に心地よく精神を委ねることができた。
登場人物のとある女性に関しては、主人公との絶縁やその後の身辺問題について、もう少し話を加えて欲しかった。登場人物としてのウエイトがある割に、引き際があっけなく、拍子抜けした。視点を変えればカラリとした江戸人の気立てが伺え、リアリティーを感じると言えなくも無いが。
また、タイトルからストーリーを推し量ると、多少気落ちしてしまうかもしれない。
当方がまさにそうでした。
ジャケットに惹かれた方等、江戸時代の寿司職人という、コアな江戸時代ファンにはたまらない?ディープな世界を期待して読むことはお勧めしがたい。
それよりも、江戸っ子の粋な人情劇に触れるつもりで読むことが、もしかしたら山本先生の思惑であり、この作品をフルに味わうための一条件であるかもしれない。