訳者の秦剛平氏によれば、最初に彼は出版社から
ゴルブ著『死海文書は誰が書いたか?』(邦題)の
翻訳を依頼されたとのこと。
これに対して秦氏が、
死海文書研究のものでは目下ベストと判断して、
出版社に紹介したのがこのヴァンダーカムの書物だそうです。
ヴァンダーカム氏は死海文書公刊プロジェクトの一員でも
あったそうで、公刊事業の内情に関してだけでなく、
死海文書をめぐる一連の学問的業績や動向についても精通しています。
この本では、クックの本よりも詳細に、文書とクムラン教団を
めぐる歴史学的、考古学的、古文書学的な検討がなされています。
著者自身の見解については、これから読む人のために
伏せておきますが、彼の議論は非常に説得的であり、刺激的です。
読んで非常に勉強になりました。
それから、秦氏の訳文もさすがと思わせるものがありました。
リズミカルかつスムーズな訳文でとても読みやすかったです。
ヴァンダーカム氏にはこの著以外にも重要な研究・概説書が多数
あるようですが、是非、秦氏の訳で、そして安価で出してほしいです。
一読者として期待しています。