オンバランス・オフバランスどちらの資産においてもその価値を計量化し、計量化されたリスクの時間的推移において考えるというものだ。若干のニュアンス的なぶれはあるかもしれないが、VaR(Value at Risk)という考え方である。それは今現在のBIS基準による自己資本比率基準による尺度の考え方をかなりの面で否定し、真の安全性・健全性を計る尺度としてバーゼル委員会が現在考えている尺度でもあるということだ。
貸出を行っている先の一部は必ず倒産するものである、という基本的なスタンスがここには貫かれている。そのリスクが発生する割合を財務比率等で算出した信用格付でどの程度発生するかを自分のところのデータとして持っていることが、これからはとても重要になってくる。つまり現在は帝国データバンク等の機関が提供している倒産確率に基づいて算出している毀損率(一般的に過去3年分を計算して算出されているであろう)に対して自行で蓄積した信用格付別倒産確率データが低ければ、当然それを適用することでその金融機関の毀損率は堂々と下がり、融資のロスが少ない金融機関としてIR的に評価は上がるということが予想される。毀損率が下がれば貸倒引当金に適用している率も堂々と下げることができる。つまりは引当金を減らすという金融機関の逼迫した課題に直結できることを意味しているのだ。
現在の金融機関を苦しめ、破綻させているもの、それは実は貸倒引当金と配当性向にあると僕は考えている。なぜならりそな銀行の破綻した原因は自己資本のかなりの部分を占めていた貸倒引当金が利益が計上できなくなったために監査法人がみとめないと言い出したからだ。足利銀行においても同様だ。監査法人も現在では監査に不備があれば監査法人自体に法の裁きが下るように法改正されたために必死だ。そして監査法人にしても金融庁にしても関東財務局にしても日銀にしても求めているのはエビデンス(証拠)なのだ。毀損率を下げることが許される証拠。それは大口不良債権先を数多く抱える大銀行ではなく、小さな銀行にこそ生きるエビデンスだと僕は考えている。
ともあれ銀行のリスク管理部署においては必携である。これからどうなっていくかが見えてくる。