「批評は『する』ものではなく、既に『ある』ものである」と編者は言う。日々感じる「違和感」「驚き」「怒り」などをひとつひとつ丁寧に拾い上げ、その原因を突き詰め、答えをきちんと言葉で表現することで、「私」と「私を取り巻く世界=他者」のあり方を捉え直す。そんな「前向きに生きる」うえでのやむにやまれぬ行為がつまり「批評」なのだ。
考えてみれば、無意識に誰もが始終やっていることだった。もっとも大抵は、都合の良い、手近な答えでお茶を濁し、日常の雑事の中に逃げ込んでしまうわけだが。
そんな「堪え性のない人々」に本書が指し示したのが、国内外の「粘り強く批評し続けた先人たち」、B・バルトーク、G・ギッシング、花田清輝、S・ソンタグ、J・グルニエ、S・ボーヴォワール、山下洋輔、黒澤明、A・ジャコメッティ、澁澤龍彦、F・カフカ、サン=テグジュペリ、W・ベンヤミンら51人が著した51編のアンソロジーである。
それぞれの批評精神を読み解き、そこで得た答えをさらに独自の批評へと発展させていく。そんななかで「高校生にはうまく立ち回って点をかせぐ“学力”よりも、“生き方を支える力”を身につけてもらいたい」というのが編者たちの願いだ。大人たちも遅くはない、今から始めよう。「批評の門」はいつでも開け放たれているのだから。(中山来太郎)
批評とは・・・
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批評とは、大多数の心のあり方ではなく少数派側のみ成立するということが分かりました。
「常識」や「大勢」と呼ばれるもの、いつの間にか世間に認められていること、これら全て多数者側のものの見方です。
その中に属する限り、孤独を感じず日々を過ごせますが、ありのまま事を見るという意識が薄れていきます。
自分の感覚に執着するとき、集団から、孤独の道へ一歩踏み出すわけです。
ありのまま事を見るという姿勢は孤独です。ですがその孤独が言葉にされることによって人と人を結び付けます。
ただし、言葉が人に届くには時間がかかります。私のつたない文章があなたの心に届く日も同様です。
思索することの大切さ
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この本は是非ともいい加減な大人に呼んでもらいたい。 批評というものを単なる批判と捉え 安易な無責任な攻撃材料としての道具と捉えている。大人たちが読むものである。 世界に一人しかいない主体である自分が感じ 真実を探求しようとする過程に生まれ
主体なりの思索の結果が真理に近づかんとする 大切な人間の思考という事を理解できる本である。 岸恵子 サガン バルトーク ボーヴォワール カフカ 黒澤 山本洋輔 あらゆる芸術 文芸のそれぞれの思索の捉え方を教えてくれる。 高校生だけでなく
全ての人に読んでもらいたい。
心に風を
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自分の物の見方が偏り始めた、と感じたときに読みたい本です。凝り固まった脳みそに風を通してくれるような本です。多彩なジャンルの批評が掲載されており、付属の編者の言葉も心に沁みます。つい分野が偏ってしまう読書を見直すときにも良いかもしれません。
日本語の豊かな表現力、多様な文体の可能性を体感させる『批評入門』
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読書好きほど読むジャンル、好む文体が偏ってくるようである。自分が気づかなくとも、この学生のために編まれた『高校生のための』三部作に目を通していると思い知らされる。「こんなに多様なテーマ、文体があったのか」と自分が井戸の中の蛙ではなかったかと思えてくる。本書はもともと学生のためのものであるが、多忙で自分の好む、あるいは必要な本しか読めない社会人にとっても、短文読み切りで手軽に紐解くことができ、日本語が本来持っている豊かな表現力、多様な文体の可能性を体感させてくれる役立つアンソロジーである。『批評入門』では中村真一郎、竹内好、ボーヴォワールら本来の批評家の文章から、黒澤明、水木しげる、中上健次、ギッシング、ケストナー、手塚治虫とジュディオングの鉄腕アトムに関する対話、そして『独裁者』の映画で出てくるチャップリンの有名な大演説まで、編者のユニークな視点から多種多様な文章が51編収められている。