特に面白く読んだのは「騎馬民族説と天皇」。考古学者の故・江上波夫氏と言語学者の田中克彦氏とがモンゴルの草原で用便をしながら交わした会話というのが主題ですが、これがすこぶるつきで面白いのです。
昭和天皇が存命中に淋しいと感じては江上氏を呼びつけて騎馬民族説を話してくれるようせがんだという秘話なのです。それが本書の著者・高島氏ならではのちょっとふざけ気味なほど滑稽な味付けをして綴られています。
もうひとつお薦めなのが「ファミレス敬語はマニュアル敬語」。
「こちらケチャップに“なります”」、「1000円“から”お預かりします」といった特異な接客用語普及の犯人がわかったというお話です。その元凶はリクルート社が約20年前に制作した接客ビデオだというのです。随分と罪作りな会社です。これが正しい接客用語だ、とばかりに多くの日本人に耳障りな日本語をすり込んでしまったのですから。
週刊文春の連載1年分をまとめて一冊にするということですから、第10巻が出るのは2006年の1月以降ということになるのでしょう。次回がとても楽しみです。