多分正解はないのでしょうが常に念頭に置いておくべき課題の一つ
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限られた字数でのレビューは非常に誤解を招く恐れがありますが、これからの日本で移民、長期滞在外国人にどのように対処すべきかは大きな課題(”問題”ではないという意味で)です。ここは頭と感情が別なところもありますし、受け入れる日本側に問題がある、または来訪する外国人側に問題があるというステレオタイプのトーンも相応しくないでしょう。著書では受け入れ体制(法制、行政、日本人の意識含め)が未整備という観点が特別永住者、韓国・朝鮮、中国、ブラジル、フィリピン(呼称は法務省データより)を中心に歴史、例をもって論じられています。ここはどうしてもアジア系外国人、還流外国人の話となります。新書判ですし、実例をもとにしていますので読みやすい。ただ、ではどうすべきかどれが正解かという点では流石に抑制を効かせていますが、これもこのテーマではやむを得ないでしょう。
著書にもあるように「外国人」への対応は日本だけの課題ではありません。家族ともども長期滞在していたアメリカで”Go back to your own country"と言われたこともありますし、英国でもあきらかに敬遠されたこともありますが、彼ら彼女達の気持ちとしては(悲しくはありましたが)分かるような気もしたのは事実です。
これからの日本にとって一番大きい問題(これは”問題”です)。第4章にある元文科省官僚の発言、「外国人政策にはいろんな批判があるが、問題の背景には三つの原則の不在がある。@外国人をどのように受け入れるかという根本的な思想が国にも国民にも文科省にもない。A教育とは何かというコンセンサスがない。B二一世紀は一国だけで物事を考える時代ではなく、アジアや地球全体から考えなければならないが、そうした前提が明確ではない。」どうやって解いていけばよいのでしょうかね、レビューアーは年齢的にもうその覇気はありません。若い世代の方何とかお願いします。