傑作ファンタジー、堂々の完結
★★★★★
対決するべき神トラクへの恐怖を胸に、ガリオン、シルク、ベルガラスの一行は眠れる神の待つ、”永遠の夜の都市”へと向かう。ナドラク、そしてモリンドランドを抜ける旅路では三人の個性を遺憾なく発揮して様々な遭遇をクリアしながら一歩一歩ガリオンは自分の運命へと近づいていく。その途中でのガリオンの決意と、その後のベルガラスとのやり取りはこの作品のシリアスとユーモアのコントラストを象徴するようなシーンでもある。
その一方で、ガリオンとトラクを出会わせるために、様々な人々の運命が交錯する。愛のために犠牲を覚悟して軍を起こしたセ・ネドラもまた戦争の渦の中で様々な経験をし、その渦の中で農奴のラメールとデットンに至る様々な登場人物達がそれぞれの運命と物語を紡ぐ。
少人数での旅路と大規模な戦争の二部構成は指輪物語を彷彿とさせるが、端役に至るまでの人物描写、敵であるアンガラク側の事情、傍観者であるニーサの動きまで含めて何とも言えず味のある人間模様を繰り広げるのがエディングス流である。人からかけ離れた神話をモチーフとしながらも、これは人々の物語でもある。
そしてそれはクライマックスにも如実に語られる。神々の力を見せつけながらも、人間のささやかで大事でちょっと滑稽な営みがはぐくんだものの価値が示され、物語はそれぞれの日常に触れて幕を下ろす。
読み通せば、この作家の虜になること請け合いの傑作である。続編の「マロリオン物語」、そして2005年7月から刊行予定の後日談にして前日談「魔術師ベルガラス」も楽しめる/楽しみな作品であることは間違いない。
新装版の出版を機会に、是非このファンタジーの大傑作を手にとって欲しい。