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大学という病―東大紛擾と教授群像 (中公文庫)

価格: ¥980
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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総ては人事抗争だったのか? ★★☆☆☆
竹内の著書はこれまで殆んど目を通し、高く評価してきたが、本書だけは首を傾げざるを得ない。
東大経済学部の抗争を総て「人事抗争」の次元にに解消して説明しているが、果たしてそうであったか?そこには権力による学問の自由への介入もあったが、純学理的な論争もあった。権力の介入に際して団結して撥ね返し得なかったことは、政治性の欠如として批判されるべきだろうが、戦前の「講座・労農」や戦後の「宇野派・反宇野」などの争いは、いくら激しく論じ合っても、終ればともに酒を酌み交わすことも出来るものだ。さらには、1960年代末の学生反乱に対する大学の対応まで「学者世界の抗争体質」といったことで整理されては、大切な要素は総て抜け落ちてしまうことにならないだろうか?
東大経済学部は1975年に『東大経済学部50年史』という、謂わば「正史」を出版している。正史の常で、一番重要な処が隠蔽されている可能性が無くはないが、そこに掲載されている厖大な「回顧座談会」は、当事者たちの抗争観を知る上で貴重である。本書と併せて読むことで、バランスを回復することをお奨めしたい。
日本の大学史 ★★★★☆
 日本の大学史(ひいては教育史)を概観する一冊。

 天下の東京大学の内紛・日常を丁寧に描く。そこから日本の全体像も見えてくる。東京大学のいきさつや日本大学史・教育史に疎い人(つまり自分)にも勧めたい。記述が単調すぎて眠くなるか。
人間的な、余りに人間的な学者群像 ★★★★★
 東京大学経済学部を主な舞台に、その創成期から68年大学紛争期に時代を置き、東京大学・文部省・新聞・雑誌、そしてそこで蠢く「学者・インテリ」の余りに人間的な「渡世」と「処世」が、豊富な資料的裏づけを持ちながら展開されている。
 東京大学経済学部教授会内の派閥抗争と「院外団」、そして時世が縦糸・横糸として絡まりながら、名目的なイデオロギー・学説と言ってしまっては身もふたも無いが、後に名を残す学者が、時に攻守を換え三国志もどきの合従連衡も繰り返しながら刻んだ歴史が記述されていく。
 「高名」であろう学者の生態は可笑しくも悲しいが、人と組織そして権力を考える時、何処の世界でも展開されている人間模様が、大学という舞台であるがゆえに膨大な記録が残されていると見る事もできる。
 本書から読み取れる人間模様は、今日もどこかで配役と時代設定・名目を変えながら再演されていることだろう。
 「派閥菌」「派閥病」の感染・発病を回避するために、あるいはせめて重症化を防ぐために一読するのも一法と思われる。
東京大学の「体質」 ★★★★★
この本は戦前の東京大学経済学部教授の「師弟関係」や「派閥抗争」を描くことによって、東京大学の体質やジャーナリズム界を含めた知的世界を描いた本です。河合栄治郎(自由主義派)、土方成美(日本精神派)、大内兵衛(マルキスト派)、そして大森義太郎(在野の知識人)、どの派閥にも肩入れせずに描かれており、読みやすい本だと思います。

東京大学の権威の裏で、ある意味、人間的な人達が生息しているということがよく分かります。

この本を読めば師弟関係や派閥抗争の問題だけでなく、すでに当時から「大学の没落」や「大学無用論」など、大学に対する批判があったということが分かります。ところが、戦後は、その問題が軍国主義と大学自治の闘いという問題にすりかわり、戦前に指摘されていた問題がうやむやになったということが明らかにされます。

つまり「大学という病」は現在も治っていないという竹内氏の指摘は正しいと言えるのではないでしょうか。
「大学の自治」の正体 ★★★★☆
戦前から戦中にかけての東大経済学部の歴史を扱ったもの。法学部からの独立を果たした直後から派閥抗争に明け暮れ、遂には当局の介入を誘発して崩壊していく過程が、豊富な資料に基づき丹念に描かれる。そこから浮かび上がるのは、「教授会による自律的人事」という大学特有の制度のガバナンスシステムとしての不全性であり、また、実質としての研究・学問を犠牲にしてでも形式としての自治を守ろうとする大学人の救いがたい体面主義である。著者の他の著作と同じように、文章や分析に何とも言えない味わいがあり、単純に読み物として面白い。