2度の事故が起きた後なら
★★☆☆☆
スペースシャトルがいかに欠陥機であるかを、その導入時からの経緯とともに紹介した本なのだが、アメリカの情報源からの生々しいネタなどがあるならまだしも、教科書に出てるような技術的な情報をもとに攻めてくるので、読む上での共感とか面白さに欠けた。
何と言っても、2度にわたり計14人が犠牲となり、多くの技術者・職人が関わったはずなのに、彼らに対する敬意や愛が感じられない。
そりゃあ、2度も失敗しているのだから、悪い点を論えば、とんでもない欠陥機のようにも書けるでしょう。でも、これほど頻繁に人を宇宙に運んだ機体はないし、有翼型宇宙機、再利用再突入機、ロケットプレーンなどのコンセプトは今も否定されてないはず。宇宙開発は、まだ途上の技術で試行錯誤の積み重ねとなるのは必至。著者の言い分だと、成功したロケット方式だけを少々のマイナーチェンジで今後も繰り返せばいいことになってしまう。英訳してNASAの人に読ませて感想を聞いてみたい。彼らは、もっと野心や夢や技術屋魂を持ってシャトルに取り組んでいたはずだから。
あとから失敗をなじる、著者の姿勢
★☆☆☆☆
これは買う必要のない本である。参考程度に図書館で借りれば十分だ。
一番の問題は、著者は早い時点からスペースシャトル計画の問題点を指摘していた、というわけでもなく、計画の失敗が多くの人に共有されるようになってから、「そもそもコンセプトが間違っていた」とか、「NASAは嘘をついていた」などと騒ぎ立てている点である。これはやっぱりずるいんじゃないかなぁと思う。スペースシャトルの計画は一応大きな挑戦であったわけだし。
スペースシャトルの失敗の歴史に学ぶ
★★★★★
シャトルは大失敗だった、安全性の面からも、開発費の面からも、維持費の面からも、そして採算性の面からも、しかし公式にはメンツを保ったまま2010年引退しようとしている。
失敗が起こるのは仕方がない、しかし、30年近くにわたってその失敗に気づくことができなかったのはなぜか?を語る書籍
本書の中でシャトルで致命的な事故が起きる確率について
現場の技術者の主張:1/100
マネジメント側の主張:1/100000
というデータがあったそうだ。
2010年で引退するスペースシャトル、「顔見せ興行」等と揶揄されるように現在は年に数回しか打ち上げない、打ち上げ回数はトータル200回を超えることはないだろう。起こった致命的な事故は2回、どちらが正しかったのかは明白だ。
「1/100000という数字は300年間毎日シャトルをとばして一回事故を起こすということに相当する。一体なぜマネジメント側は、かくも非現実的なほど機械を信用することができたのだろう」
(事故調査委員リチャードファインマンのことば)
【本書188〜191ページより】
原文はこちら(冒頭)
↓
http://www.ranum.com/security/computer_security/editorials/dumb/feynman.html
conclusion以下でファインマンは、現場とマネージメントの”コミュニケーションの欠落”をその大きな原因として挙げられているが、私の属している会社でもよく見かけられます。
もっとも身近な私と上司の間でも、、、反省せねば。
拙速にまとめられた本
★☆☆☆☆
著者の「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」は、行政の専門知の欠如とその理由の指摘などに共感をもって読むことができたのですが、本書は読後、後味の悪さだけが残りました。
技術開発の実務経験のある人ならば理解いただけることなのですが、最初から全てがわかった技術開発、成功が保証された技術開発はありません。プロジェクトを進めていく中で個々の要素ができ、着手時にわからなかったものが見えてき、対応をはかりながら一歩一歩進められるのが実際です。本書の後味の悪さは命を賭してミッションに挑む宇宙飛行士に払うべき敬意、そして苦しみながら開発に携わったエンジニアに対して最低限払うべき敬意が、「これでもか」、「これでもか」と繰り返される批判から感じられないことによります。
スペースシャトルの退役のニュースから企画された本と思いますが、出版を急いだためでしょうか、拙速な内容に思われます。日経BPの元記者として白黒つけて書くのが習い性となっているのかもしれませんが、エンジニアにも共感できるように推考して書いていてくれたら本書に対するレビューアーの評価は変わっていたと思います。
スペースシャトルの開発の歴史は Dennis R. Jenkinsの"Space Shuttle"、スペースシャトル「チャレンジャー」の事故は、Diane Vaughanの"The Challenger Launch Decision"、そして過去の有人飛行に関する事故はDavid Shaylerの"Disasters and Accidents in Manned Spaceflight"が参考となります。ご関心のある方はご一読ください。
アグレッシブな一冊
★★☆☆☆
こんな重大な話なのに、翻訳物を含め、なかなかいい本にめぐりあえませんでした。その意味では貴重な解説書です。ただ、通好みの面があって、一般の人には刺激が強くて、ミスリードしてしまうかも。ディベートの一方の主張を聞いていると思った方がいいですね。こういうのはアメリカの深い部分こそが面白いわけだけれども、取材量よりも知識の方が勝ってしまって、犠牲者の痛みとかドラマ的な部分に欠けるのが残念。そんなにシャトルって鬼っ子ですか?