19歳の高橋のまさに命を賭けた書
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高橋貞樹 1905年(明治38年)大分生まれ 1929年政治犯として逮捕(懲役15年求刑)、1935年獄中にて結核悪化のため刑の免除、その後死亡 享年30歳
本書は高橋19歳の時の原著(発禁、その後改訂版 少なくとも1年以内に8000部が出版)を沖浦氏が校注し、あとがきで高橋の業績を高く評価している。
高橋は同書発行の3か月後には「世界の資本主義戦」を書き下ろしているという。
さて本書であるが、人間が人間を差別する歴史を差別される側と差別する側に立って多数の史料を用いて綴っている。「穢れ」の思想は間違いなく仏教の影響であり、ある一部の人々が解放令(明治4年)の後も言われなき理由で差別あるいは虐待されてきた。そして高橋が水平運動に関わり、真の人間解放を求める戦いの書でもある。
残念なが高橋の死後も差別問題は続き、その一部は朝日新聞の若宮啓文が若かりし頃世に出した「ルポ 現代の被差別部落」でも明らかである。
また部落問題は民俗学分野では柳田國男や宮本常一が取りあげているし、歴史学の網野善彦も大きな問題として(彼の出身地では部落問題はほぼないと言ってよく、そのために大きな興味となった)取り上げている。
「職業に貴賎なし」というあたりまえの事を貫くためには教育しかないのだろう。