多民族国家
★★★★☆
アンダー40歳
社会の教科書には書いていないけど、学校では
日本は多民族国家であると教わった世代の私です。
日本にはアイヌ民族も琉球民族もいると・・・
で、そのことについて非常に興味を持ちつつも
普通に生活していても、その後、ほとんど多民族国家、単一民族国家
についての主張が日常的な私たちの会話に
出てこないのが不思議でした。目をつぶっているように思えていました
北海道に行けばアイヌの人達がいるんだろうと
幼少の頃は心に思っていました
開拓者もいるけどアイヌの人もいてって
同じ国土にいる仲間なのに・・・アイヌの歴史のことが知りたくて
札幌の飲み屋で地元の人に、どこに観光したいか?ときかれたとき
とにかくアイヌ関係のものを知りたいし、貴方たち開拓者の子孫が
どんな教育をされてきたか知りたいと・・・・・
「東京ならいざ知らずここで、この土地でアイヌという言葉を発するのは
いけない」みんな凄い形相になりました。それまで自分の祖先は広島だとか
祖先の話をしていたのに・・・
今の道民の心の中にアイヌというこどばがどんな存在なのか
解りません
でも北海道を訪れると、札幌の喧騒を離れ自然に触れると
いつも、昔、興味を持って読んだ、アイヌの詩が心に奏でられます
その詩が地里幸恵さんという19歳でなくなられた方の本の抜粋
だと知り、この本に手を伸ばしました。
幸恵さんよりもっと昔、アイヌの人々が独自の文化を持って
自由に暮らしていたとき、大自然の中で人々が生き生きと暮らしていた
そんな事を実感させられるアイヌの話、それを和訳という形で残した
生涯、幸恵さんは確かに生きて、アイヌを愛しつつ
若くして亡くなった事は解りました。また、それが数少ない重要な資料としての価値になって
いることもわかりました。
日本が確かに多国籍国家だということも・・
でも、まだまだ知りたいと思わせてくれる一冊でした
あと10冊くらいはアイヌ関係の本を読まなくては
日本人と言えないなあと思いました
でも、まだ解らないことだらけだらけです。北海道の人達が何を恐れているのか
なぜアイヌを差別としてしか見れないのか??
日本のアイヌ語研究に多大な影響を与えた女性
★★★★☆
日本のアイヌ語研究者として真っ先にその名が浮かぶのは、何と言っても金田一京助である。
さらには、その金田一の弟子である知里真志保だろう。
その二人に多大な影響を与えた人物が、知里幸恵である。
知里幸恵は「アイヌ神謡集」の著者。
これはアイヌの口承文芸であるユーカラに日本語の訳をあてた可愛らしい装丁の本で、
アイヌの精神の蒸留の一滴とも言うべきもの。アイヌが初めて世に送り出した記念すべき一冊だった。
単純に訳するだけでなく、アイヌ語でも日本語でも美しく響く詩世界が広がり、
一つ一つの言葉から、アイヌの精神と彼女の聡明さがあふれ出ている。
が、この本と引き換えのように、心臓病によりたった19歳で亡くなった。
金田一京助は、幸恵はそのアイヌ語研究にはなくてはならないパートナーであり、
その表記法などで特に大きな影響を受けたという。
弟、真志保に対しては良い姉であり、彼女が真志保にあてた手紙はどれも、
こぼれるような愛情につつまれている。
闘争的な性格だった真志保も、姉幸恵に対する敬慕の情は終生失わず、
その研究において、大きな支えだったに違いない。
この本はそんな知里幸恵の生涯を描いた数少ない本であり、その足跡が詳しく記されている。
著者の藤本英夫氏は生前の金田一京助、知里真志保とも交流があり、
それぞれの生涯を一冊ずつの本にまとめてこられた。
氏の著作である「金田一京助」と「知里真志保の生涯―アイヌ学復権の闘い」との併読をおすすめする。
一連の著作では、一部タブーのような話も敢えて記述している。
個人的には多少下世話かと思える表現もあったが、より深く三人の人生に迫る姿勢として捉えておきたい。
また、人から解説されるでなく純粋に知里幸恵の人となり、その心を知りたいという人には、
「知里幸恵遺稿 銀のしずく」を特に強くおすすめしたい。
この本を読んだときには、思わず感情がこみあげた。
彼女の早すぎる死はあまりにもったいない。
★★★★★
失われゆくふるさとの文化を身を賭して「アイヌ神謡集」に書き遺した知里幸惠の生涯について愛情を込めて綴られた逸品。
これは維新後の日本史のひとつの投影とも言えよう。日本統治時代の台湾や朝鮮に興味があるひとにもお奨め。