結局世の中はそんなにわかりやすくはないし、捨てたもんでもない
★★★★☆
『集中講義!アメリカ現代思想』や『〈宗教化〉する現代思想』などの入門書で、思想哲学史を切れ味鋭くまとめる手堅い仕事に定評のある仲正昌樹。しかし、この頃は自身の統一教会入信時の体験をまとめた『Nの肖像』があるように、その執筆の間口を徐々に広げつつある。本書はそんな彼の傾向の一端だろう、一種の若者論だ。
この本はタイトルにある<リア充>のように、近年若者の周囲で取り沙汰される言説に批判的検討をくわえようという趣旨のものだ。おそらく自身も若者にあたる編集者とのインタビュー形式の雑談がまとめられているかっこうになっている。秋葉原での無差別殺戮をした某容疑者に「格差社会」を投影する某論壇や、「人間力」というわけのわからん「力」で人をはかってしまう学校、会社、そしてマスコミの言説はもちろん、モテるかモテないかで自分のすべてをはかってしまう若者たちも、当然訴状にはあがっている。
仲正のこれまでの著作を読んでいる人なら、おそらくは「彼らしい」意見だと納得するはずだ。例えば「天皇主義になろう!」などと、決してパンチのある「結論」を示してくれることはない。パンチのある意見というのは、ようは「わかりやすい意見」なわけで、「わかりやすさ」を批判してきた彼はそんなことするわけがない。
「<リア充>に見える人も、本当はそんな幸せなはずはない」と自分を慰めろというなるほど穏当な結論なのだけれど、結局そういうことなのだろう。おそらく「真の仲間」の待っている場所なんて、だれにもない。「真のリア充」がいるとすれば、それはラリっている人なのだろう。心配するな、仲正先生も半年に一回くらいは寂しくなるそうだから。
しかしこの本を読んだどんな読者も、仲正氏がテレビ番組にやたら詳しいことだけには、きっと驚くことになるはずだ。
モテとは承認である
★★★★★
面白かったです。
秋葉原通り魔事件を題材に、
格差社会、モテ/非モテ、人間力、友達といった若者を取り巻くキーワードについて、
編集者と対話を進めていきます。
仲正先生の現代を観る眼の比較対象は、
彼の若者時代である1980年代です。
ですから、読み方によっては、
1980年代論とも読むことができ、
日本社会の変遷を理解することもできます。
若者論としては、
ニートフリーター論、
格差社会論など、
今の日本社会を論じてきた大きな議論を踏まえての、
若者の現状分析だったりするので、
複数の視点を統合している感覚があって、
それは当然仲正先生のカラーなので、
仲正ゼミを受講しているような感じになります。
モテとは承認である、
という解釈が一番面白かったし、
眼から鱗がおちました。
全体的に分かりやすい文章ですし、
スノッブ臭さもなく、
じっくり人間関係を考えるのに向いている1冊だと思います。
仲正本
★★★☆☆
例の秋葉原通り魔事件をネタに仲正教授に
いろいろ聞いてみました。
そういう本。
秋葉原通り魔事件を巡る論議か仲正教授に興味が
ある人だったら、ひまつぶし程度にはなるかも。