怖さよりも切なさが……
★★★★★
実話ですよと言いつつも作家としてもなみなみならぬ力量を持つ著者の創作の手が入ってはいるのだと思います。けれども長年にわたって収集されたこれらの「話」の持っている、悲しさやおかしさ、怖さや醜さは人が生きていく上で避けては通れない濃縮されたドラマを備え、読んでいて本当にずっしりきます。
鬼になってしまった人の話で涙がどわっと出てきました。苦労して、それでも何とか幸せになろうとして、あがき、もがき、それなりに努力して力及ばず亡くなって、死んだ後でまでさまよい続けている古い霊。
逃げたりしないでお線香なりお酒なりいくらでもあげるのに……と悲しみにうちひしがれていたところ、帯で禁止されているにもかかわらず一日で読破したせいか、怪奇現象が襲来しました(苦笑)。
自宅の電話がひと晩中なり続け、電話線を抜いたのに勝手に留守録機能が作動して「電話がかかってきていないのに」次々に留守録に伝言が入り続けました。あまりのおそろしさに電源コードを抜いたのですが……伝言は再生しないで消去することにします。
怪談話が好きで何冊も読破してきた自分ですが、こんなことは初めてでした。
安易な同情がいけないのか、自分の慈悲の心が足りないのか、はたまた単なる誤動作か……。
少し時間をおいて読み返したいと思います。その時また何かが起きるかどうかは、私にはわかりません。
読み続けると・・・
★★★★☆
ひとつひとつは、さほど怖くはありません。
怪談話にありがちなネタが多く、それをなかなかに怖く表現してはありますが、まあ、その程度です。怖くて怖くてしょうがない、というほどの話はありません。
それでも、なかなか調子よく読めるものですから、読み進みました。
そしたら・・・
なんだか背筋が寒くなってきました。
話が怖いというのとは、ちょっと違います。
なんだか、嫌あな感じがしてきたのです。
私自身はいわゆる「見える人」ではありません。
しかし、この本のせいなのか、なんとなく感じるようになってきたような気がするのです。
今までなんとも思っていなかった闇が、影が、なんだか不気味に感じられて、そこに何かがいるような気がして、怖いのです。
単に暗示にかかっただけなら良いのですが、もしかして、この本に、そういう能力を開花させる力があるのだとしたら・・・・
これを書いている今、まだ、全部を読み終えていません。第77話「ゆうべの公園」まできました。
このまま最後まで読んでよいものか、正直迷っています。
後からゾクゾクくる怖さ
★★★★☆
「幽」連載の実話怪談「怪を訊く日々」の増補出版です。
実際の聞き書きなだけに、話に不思議な説得力があります。
淡々とした語りですが、あとに残る怖さがありますね
福澤怪談の持ち味が十分に発揮されてます
★★★★★
実録怪談、
実話怪談になると福澤徹三の持ち味が発揮されるようだ。
福澤の醒めた語り口、
九州の独特の湿度の高い感じがふんだんに盛り込まれています。
また水商売の荒んだ感じも相変わらず。
荒れた日常に怪異が忍び寄る様が、
「新耳袋」にない文学性があります。
「子犬」。
怖い。短くてストーリーもない。
この怖さは創作ではありえないと思いました。
お勧めの1冊です。