こんなに一気に読み切れる冒険譚は最近なかった
★★★★★
今世紀になっても、こんな、身ひとつの体当たりの冒険家が居たとは知りませんでした。
コツコツと役所勤めをしながら、確実に夢の実現に近づいていく。(極力)他人の介入を許さず
あくまで自分流を貫き、楽天的かつ楽観的に前のめりですすんでいく姿勢が素晴らしいです。
学生時代、下に挙げた『サハラ』の2冊を読んで、人生観が変わりました。そのとき以来の衝撃です。
植村直己が、個人的に山に入っていたころから、次第にスポンサードに頼るようになり、結局は
マッキンリーに消えたように、スポンサーを山のようにつけた『冒険』というよりは『ショービジ
ネス』に堕した冒険家たちに、一石を投じる一冊と思います。
尚、初回の太平洋横断のあと、救助されるまで、またそれ以降の行動は、『たか号漂流』と比べると、
興味深いものがあります。ぜひ一緒に読むことをお勧めします。
サハラに賭けた青春―上温湯隆の手記 (1975年)
サハラに死す―上温湯隆の一生 (1975年)
青春を山に賭けて (文春文庫 う 1-1)
極北に駆ける (文春文庫 う 1-2)
たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い (新潮文庫)
気球は上空9千mまで上昇でき,アメリカまで60時間で到達できる!?
★★★★★
《こうやって人は死んでいくんだろうな,と思った.》という出だしの文章が新聞で紹介され,本を書いているという事はこの人は生還したんだ...どのような状況でどのように生還したのか?という興味が,私がこの本を購入したきっかけ.
他のレビューの方々と違い,私の読後の驚きは,想像を越えた気球の世界.
神田さんの気球は富士山を越え,北アルプスを越え,本州を横断し...ヒマラヤで9千メートル上空に達してナンガパルバットを越えた.人体にとっては死の世界まで,あの弱々しい気球は導く.彼らが死に直面し,また神田さんが再度挑戦したのは,高度8千メートルに上昇して時速150kmのジェット気流に乗って60時間でアメリカ大陸に到達するというもの.気球は風と共に進むので気球内では無風状態という.こういう世界を私は驚きを持って初めて知った.
冒険家、その愚かしくも崇高な性
★★★★★
熱気球に取り憑かれた男、と言ってもいいのかも知れない。普段は町役場の学校給食センター長が本職ながら、熱気球での富士山越えを果たしたのち、神田道夫氏は人生の軸足を熱気球の記録更新に挑むアマチュア冒険家へと移し替える。日本における熱気球飛行の先駆者・市吉氏や、会社勤務の傍ら精力的なフライトに挑む竹澤氏と組んで次々と新たな記録に挑む神田氏は、ついに自作気球での太平洋横断を決心する。パートナーに選ばれ、共に死線を彷徨った石川氏の臨場感に富む記述はどこか少し歪だが身体感覚に忠実な“手作り”の趣に好感が持てる。ただ、読後感は多くの冒険譚がもたらしてくれるような爽やかさとはほど遠い。二度目の太平洋横断への挑戦に向けてただひたすら盲進し、周囲の助言にも耳を貸さず、素人目にも無謀としか言いようのないプランをごり押しした挙げ句、結局パートナーを見つけられないままたった一人で空へと昇っていく神田氏を、周囲は鼻白みつつ見送る。誰よりも生を謳歌しているかに見える冒険家の多くが必然的に死出の旅へと招き寄せられる皮肉を、自らも冒険家と呼ばれる石川氏はラスト数行の哀切な呼びかけに込める。未だ、返事はない。
気球バカ一代!神田道夫
★★★★☆
格闘技の雑誌で若いときシュートボクシングのジムに通っていたという冒険家の石川直樹のインタビュー読んだらすごい面白くてさっそく著作本「最後の冒険家」読む。
2004年に気球家(言葉勝手に作りました)の神田道夫と一緒に太平洋を横断しようとして失敗した話がメインです。
まず気球の知識0だから初めて知ることばかりでかなり興味深かったです。
空って無限に広がってるイメージがあるけど気流という道が縦横に走っているという感覚とか回り全部が真っ青な状況とか「へぇ〜」と思うことばかりです。
神田道夫の目標に向って突き進むパワーにも読んでるだけで圧倒されました。とにかく行動力ありまくりで否定的な意見を言おうものなら「疫病神!」とかののしられるほど・・・・すげえ人やな。
04年の横断が失敗して海に落ちて救出されるシーンは経験者のみ語れる臨場感があふれまくりで思わず引き込まれるでしょう・・・そして絶対にそんな体験したくない!と強く思った。
不屈のチャレンジャー神田道夫はその4年後の08年今度は一人で再挑戦、そのまま行方不明になったままです。
昔「気球に乗ってどこまでも」という歌を習ったけどまさにどこまでもいってしまった・・・・
現代における「冒険」の意味を問う。
★★★★☆
2008年,気球による単独での太平洋横断に挑戦したまま行方不明となった冒険家・神田道夫氏の足跡を綴るルポタージュ。
著者自身も同行した一度目の挑戦では,燃料不足により計画を断念。しかし,生死の境をさまよって貨物船に救助された直後から,神田はすでに次回の挑戦の計画を思い立つ。
しかしリスクを無視した神田の強引な進め方に周囲は辟易し,石川ら複数の人間が神田の誘いを拒む。やむなく神田は単独での実行を決心し,出発。「戻っていない」という現実を知っていながら,二度目の挑戦への準備過程を読み進めるのは,つらい。
昔ながらの地理的な冒険が限界に至った現代において,「冒険とは何か」を改めて問う作品となっている。