密教研究の画期的名著
★★★★★
1987年リブロポート社刊の再版です。
しかし、単なる再版ではなく、
序章として書き下ろしの論文(実に110枚)
「『法華経』・願成就の哲学」が収録されています。
この本は、釈尊の悟りの根本体験から出発し、
『華厳経』の成立、『大日経』から『金剛頂経』への転換。
そしてサンヴァラ系密教へと展開する仏教思想史の全体像を
明快に解き明かしています。
果たして、この“反密教学”というタイトルの意味は、
著者が密教に反対する立場を示すというのではなく、
密教そのものが反密教として完結し、そこではじめて
(仏教そのものの)思想的原則をわれわれに示す、ということです。
すなわち、密教が展開する過程において、
密教は自己否定し、反密教へと進み、最終的には
サンヴァラ系密教は反密教として帰結すると(著者は)規定するのです。
また、弘法大師空海に関する章は、
未だに色褪せることなく輝きを放ち、
我々を真言密教の核心へと誘ってくれます。
とにかく、密教研究の画期的名著であることは疑いありません。
特に後期密教に関する研究において、巨大なる存在であると断言します。