『月下花伝　時の橋を駆けて』の続編だが、ぼくは『花天新選組』から読んだ。
そういう逆コースをたどって読んでも、謎解きのようで面白かった。
ことに、『花天新選組』の新選組の面々がとても新鮮だった。
作者は史実をよく調べているらしく、リアルに読みごたえがあった。
タイムスリップした主人公の少女「秋飛」は、魂は女、身体は男という混乱の中でも、新選組の一員として生きようとする。
こわもての土方のおもわず吹き出す可愛さや、病身ながら明るさと鋭さを失わない沖田は、個人的に理想の土方と沖田。
戦闘場面の凄みは、宝塚的な表紙からは想像できなかった。
秋飛が男の体になったことで、沖田との恋愛は本当の意味で人生をかけた純愛になったと思う。
後半の土方と沖田の別れのシーンは、これまでにないほど泣いた。
秋飛の今後を想像させるラストシーンには賛否はあるだろうが、ぼくはこのラストだからこそ、秋飛の純愛が昇華するのだと思う。

　お話の中でヒロインが男の平隊士の体に乗り移ってしまい、どちらも男同士に
なってしまうため、それで恋愛されても困るなあ・・・という不安があったのですが、
ヒロインが一途に沖田を慕っていて、帯のあおり文句で想像したほど双方向に恋愛恋愛
してなかったせいか、読みやすかったです。
　新選組の隊士達の会話や、仲が良さそうな雰囲気が好きでした。

感動した！

凄い迫力！

まるで映像を観ているよう！

なんて展開なのって！

読んでいくうちに、私も月倉秋飛と同じように沖田総司を好きになっていました。

そして、総司の名を呼び一緒に泣いていました。

言葉にできなくたって魂の想いは伝わり、人の心を動かすんですね。

読み終わって、晴れ晴れとした気持ちと、これから秋飛にどんな人生が待ち構えているのかと案ずる気持ちとが交錯しています。

もし、総司の魂だけでなく身体も現代にタイムスリップさせられるのなら労咳を治してあげたい。

そうして、もっと長い時間を秋飛と共有させてあげたいと思ったりしました。

　これの前作の「月下花伝」を読んで、その続編と言う事で
早速購入し、ちびちび読むつもりが止められず一気読みするはめに・・・。

「月下花伝」で、現代を生きる主人公と幕末を生きる沖田総司が
出会うところは、何となくアリソン・アトリーの「時の旅人」を
彷彿とさせる過去の人との接触の仕方であった。
その続編である本作では、ある事がきっかけで
主人公の魂だけが幕末にタイムスリップし、
新選組のとある平隊士の体に乗り移ってしまうという
思いもよらぬ展開だった。
子供騙しのタイムスリップ物語とは異なり、
主人公が幕末の動乱の時代に適応していく様子も、
沖田総司との接し方にも不自然さがない上、
史実にきちんと基づいたストーリー展開となっている。
さらに、その時代の町や史実上の戦いなどの光景が、
映像を見ている様なリアルさと迫力であった。
最後、どうしても気になる疑問が残ったので、
星５つとしたいところを４つに（ネタばれになるので言えない）。

しかし現代の若者の精神的レベルは、
幕末の同年代の若者のそれとは明らかにギャップがあるので、
実際には本作の主人公の様にあの時代に適応できるかどうか
考え難いものがある。
　今度は総司の方が現代にタイムスリップして、
現代の有様を見て嘆いたり、困惑したりなんていう
逆バーションをこの作家さんに書いて貰えたら面白いだろうなー。