現代という時代の見取り図
★★★★★
近代社会の自己認識の学として社会科学は発展してきた。本書は、そうした社会科学に課せられた課題を果すべく、激動に見舞われ人々の不安を掻き立てる現代世界を、社会科学的で大きなスケールの方法論を通じて読み解こうとしている。
具体的には、社会、国家、世界という3つの領域を横糸に、各領域での平等と不平等の葛藤と統一を縦糸にしながら、階級社会論、福祉国家論、帝国主義論を中心にして、議論が展開されている。
また、著者が、一橋大学の学問を代表する一人であった高島善哉氏の議論を大いに引き合いに出していることからも分かるように、本書の背景には、市民社会の学たる社会科学の総合大学を志してきた一橋大学の伝統・学風が底流に流れているようにも思われる。
現代を相対化し本質を見究める視点を得たいと願う者にとって一読の価値ある書であろう。