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ラヴェル:ピアノ曲全集

価格: ¥2,900
カテゴリ: CD
ブランド: ユニバーサル ミュージック クラシック
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65点をどのように評価するか ★☆☆☆☆
ロジェの演奏は決して悪くない.
が,技術面では格段に飛躍的に進化した今日において,
悪くないという程度の演奏をするピアニストはザラにいる.
ロジェの演奏に光るものを感じるかと言われると,微妙なところ.
音楽的な魅力の捉え方は個人的なものであるから,
人によって意見が大きく割れるのは当然.その上で,
ロジェの演奏は,よく言えば妥当.悪く言えば,どこにでもありそう.
さらに他の方のレビューにもあるとおり,録音状態が良くない.
これは致命的な欠陥と言える.
(録音が良くなると,逆に粗が目立つかもしれないが.)
印象としては65点.

ロルティ盤の「技巧,解釈,録音」の三役そろい踏みは85点といった
ところか(音質の差によるところが大きい).
ティボーデ盤の「ラヴェルのキャラクターにハマッた感」にも一歩及ばず,
タロー盤における「場外ホームラン」級の意外性や,演出へのこだわり
(演奏の順序の工夫など)も感じられない.
かといって,フランソワの「古代生物を見る面白さ」(今日では許容し難い
いびつさ,ぎこちなさが逆に新鮮?)もない.

さらに,「ラヴェル全集」という取り上げ方自体に,(音学ならともかく)
音楽としてセンスがあるかというと,それもまた疑問である.
個々の曲で競合盤を挙げていくと,さらにこのCDの存在価値は下がる.

わざわざ時間を割いてラヴェルのピアノ全曲集を聴こうと思い,
その中で,敢えてロジェのCDに手を伸ばす気になるか.
このように問われると,今のところ,やんわりとNOである.
星1つという評価は厳しいが,「結局,聴かなくなった演奏」という事実を
前にして,星2つ以上は有り得ないかな.
よく弾けているけれど、アーティキュレーション表現などが弱いし音質も悪い。 ★★★☆☆
この世代のフランスのピアニストにはありがちだと思いますが、アーティキュレーションやフレージングの特徴づけが弱いので、個々の曲のキャラクターがはっきりしない演奏になっています。とはいえテクニック的な切れ味はあって、難曲でもスイスイ弾いているのは見事(だから余計に印象に残らない)。
音質の悪さに関しては他の人も書いているとおりで、さまざまなタッチを駆使して微妙な音色表現をしたであろうピアニッシモが単にモゴモゴした弱音に成り下がっているのは可哀想だと思います。音質が改善されたら★4つにしたいです。
儚きロマンチシズムの調べ ★★★★★
このCDを聴いて、漠とした印象しか持たないリスナーもいると思います。たしかに決してインパクトの強い演奏ではありません。
ロジェはサンソン・フランソワのように独特な世界を作り出してみせるわけでもないし、アルゲリッチのような情熱も、ポリーニのような美しいテクニックも感じられません。
ただ、そうした上で思うのは、ラヴェルのピアノ曲はこれでいいのではないかということです。ロジェ自身が言っているように、この演奏にはいかにもラヴェルらしい淡いロマンチシズムが感じられるからです。ロジェの演奏にはいい意味での「ゆるさ」があります。そしてそれはラヴェルのピアノ曲の味であるような気がするのです。

管弦楽曲においてもドイツ的なオーケストラによる力強い構築性のある音作りが、ラヴェルの世界と相容れないことはよく指摘されることでもあり、聴いていて違和感を覚える人も多いようです。ラヴェルの楽曲は形式的に自由で、表現の振幅も大きく、ゆえに独特な色彩感があります。そうした特殊性を知悉しているフランスのオーケストラの演奏では色彩感に富んだ魅力的な楽曲に聴こえますが、ドイツのオーケストラだと不協和音が連続するぎくしゃくした現代音楽のように聞こえたりします。
このCDのピアノ曲でもそれは同じです。もしこれらを、聴いているだけで楽譜が浮かんでくるような明晰なテクニックで弾いていたら――と考えると、それこそがロジェが否定しているところの「ハートよりも頭脳から生まれたといわれる」というラヴェルのイメージになったのだろうと思うわけです。
サティやドビュッシーなどと並ぶ、淡いフランス流のロマンチシズムは、強い完全主義の前に儚く消えてしまう、しかしだからこそ美しいのだと思います。ロジェのゆるい演奏を私もゆったりと楽しみました
フランソワと比べると ★★☆☆☆
初めて買ったのがロジェだったのですが、
フランソワの個性的な方を聴いたら、
なんとも物足りない。
普段、ジャズとかも聴く私の感性のせいなのか。
ロマンティストとしてのラヴェル ★★★★★
このディスクのライナーノートによると、「ラヴェルはロマン派の作曲家である」と若き日のピアニスト・ロジェは解釈している。妥当な意見であると思うし、少なくとも実際の演奏においてロジェはそれをきちんと表現し切っている。もっとも、ロジェのロマンは汗臭い熱血漢のそれではない。あくまでクールにキメたコンサートピアニストとしてのロマンである。

羽が舞うように軽やかな「クープランの墓」。端正な和声の刻みが舞曲としての古風さを鮮明に表出する、静かな哀しみに満ちた「亡き王女の為のパヴァーヌ」。寸分の贅肉も持たない屈強の悪魔の彫像を思わせる、冷たい唯美主義の結晶「夜のガスパール」。

どの曲にも、若きロジェの爽やかさと老獪さが垣間見える。秀演だ。