偽札作戦は有効か、それとも。
★★★★☆
ナチスドイツの偽札づくりである「ベルンハルト作戦」について書かれた本です。
偽ポンド札(イギリスの通貨)をつくり、その偽札を上空からロンドンに散布し、イギリス経済を破滅させようという作戦です。
その偽札をつくるのに、秘密厳守のため、いつでも殺すことができるユダヤ人を使うという作戦。
いつ殺されるかわからないユダヤ人を使用して、つくった偽札のあまりの精巧さに作り上げさせたSS将校クルーガーの手法とは。
そういう経営という観点から見てもおもしろい。
それにしても、西欧史にこれほど偽札を使用した敵国の攻撃があったとは驚きです。
北朝鮮の偽札以外でアジア圏でもこうした偽札作戦はあったのでしょうか。
著者は、アメリカやイギリスにも同様の偽札作戦があったが実行されなかったことを引き合いにだし、独裁国家だったナチスらしい間抜けな作戦であったと結論づけています。
あともうひとつ、重要な情報を手に入れたとしても、決定者がその情報をうまく使うことのできなければ意味がないということをよく示しています。
真実は小説よりも〜
★★★★★
ドイツの史上最大の通貨偽造“ベルンハルト作戦”の詳細な全容を描いたノンフィクション。絶滅収容所、奴隷収容所と言ったナチの暗部無しに語れない話なのだが、英独を中心とした多国間の駆け引きは非常に人間臭く、時にはユーモラスな趣さえ感じられる。
戦争と言う極限状態の中、人間のエゴと本性がむき出されたためだろう。
全体像がつかめればいう事なし!
★★★★☆
ナチスの偽札作戦である「ベルンハルト」作戦について詳述した本。筆者の入念な取材をもとにした臨場感あふれる記述にどんどん引き込まれる。また、翻訳物にありがちな外国人の人名の不慣れからくる誰が誰だか分からなくなる混乱も、最初に人名が登場するとき重点的に記述されており、ほとんどない。
ただ、作戦がイギリス経済に与えた影響、実際偽札の何割ぐらいが使われたかなどの、全体像がつかめない点が☆1つ減で4つ。
『大脱走』とか『007』が好きな、戦争映画、スパイ映画好きの人にオススメ
★★★★★
アカデミー外国語映画賞にノミネートされた映画『ヒトラーの贋札』を観て、ベルンハルト作戦のことをもっと知りたくなり、この『ヒトラー・マネー』を読みました。
強制収容所での贋札づくりに焦点を絞っていて、それが映画として面白かったが、贋ポンド、偽ドルが実際、どんな風に使われていたのか、偽札の行方とか、いろんな謎が気になってしまい、本当のところはどうなの?と、この本を読まずにはいられなくなりました……。
手嶋龍一著『ウルトラダラー』の北朝鮮のように、国家が本気で紙幣偽造するなんてことが、本当にあったなんて、驚きです。犯罪も国家ぐるみだとすごいことになるのだなあ、と。
考えてみれば、普段使っているお金って、実態がないわけで、電子マネーなんて偽札みたいなもの。偽札でも流通すればそれは本物なわけです。経済なんて信用だけで成り立っているのだなあと、つくづく思います。マネーゲームなどというけど、お金って所詮はヴァーチャルなものなのだと、思いました。
イングランド銀行は面子にかけて、偽5ポンド紙幣の存在を、認めなかったから、『ベルンハルト作戦』のことを僕らは知らずにいた。戦後何十年もたってやっと公開されてきた機密情報をもとにこの本は書かれたらしい。
SSの内部事情、第2次世界大戦の時の諜報活動とか、戦後のモサドのこととか、知らなかったことがいっぱいで、すごく勉強になったし、刺激の強い本でした。
おもしろいが食いたらない
★★★☆☆
親衛隊将校クリューガーには苦悩も葛藤もない。あるのは狡猾な計算だけだ。結果的にユダヤ人の命を救ったといっても、用が済めば殺すつもりでいたし、ユダヤ人が救われたのはクリューガーのおかげではない。「シンドラーのリスト」とは真逆の話だ。
ナチ親衛隊の暗躍ぶりがよくわかるが、命と引き替えに親衛隊に協力させられたユダヤ人の苦悩が伝わってこないのが難点。
それにしても英国銀行は情けない。この事実が長らく明らかにされなかったのは、銀行のメンツを守るためだったのか。