数年前、中国茶にすっかり魅了され、なかでも自分の好きなお茶が台湾のものであることを知って、台北郊外の猫空に行った。茶畑が広がる小高い山の中に点在する茶藝館。外の空気を感じながら飲むお茶と料理のおいしいこと。気づけばあっという間に数時間が経過しており、ぜいたくで優美なひとときを過ごせたことに感動した。
　あのときのゆったりと流れる時間、お茶を愛する人々のやさしい笑顔、しっとりとした山の空気。さすが菊地和男氏は茶人である。お茶を愛し、知り尽くした彼だからこそ表現できる貴重な写真の数々と愛のある文章。単なる観光ガイドではない。またお茶を飲みに台湾へ行ってみたいと思った。