テロとの戦いの時代に「心」にまで投影された文化冷戦の影響を分析した好著
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冷戦といえば、米ソ核戦争の可能性などの軍事、政治、経済面に焦点があてられることが多いが、本書は「文化冷戦」というキーワードを用い、社会や個人の生活や「心」にまで投影された冷戦の影響を分析している。1940年代後半〜1970年代までの米ーアジア関係をとりあげている。文化冷戦という視点を重視することにより、パワーポリティクスとしての冷戦観を超越し、より包括的な冷戦像を示した画期的な研究である。映画、米国の文化交流当局、ロックフェラー財団の影響やCIAの関与など、文化冷戦を担ったさまざまなアクターを丁寧に分析している。アメリカ社会、日米関係、国際関係などを包括的に理解する上で、必読文献になる貴重な書物である。