半世紀の男たちよ
★★★★★
浦沢直樹が音楽をやって、それをCDにしたという話を聞いた時に、何度も購入しようかどうしようかと迷った。だが、止めていた。
一芸に秀でて名を成した人が、別の分野で何か作った時には、決して余技以上のものではないということが、これでも50年近く生きていればわかってくるので、浦沢直樹もその手だろうと思っていた。けれども、CasaBRUTUS特別編集 浦沢直樹読本 (マガジンハウスムック CASA BRUTUS)の中で浦沢の音楽について触れた文章を読んだ時に、何か違うのかもしれないと思い、改めて聴いてみることにした。
きっと浦沢直樹と同世代の人ならば、これを聴いただけでもうすべてわかってしまうだろう。
自分たちが熱を上げ、あこがれ、聴きまくった音はこれなんだ、と思う。
決して今様ではないけれども、きっとこんなのを聴き続けている人はいると思う。そんな音楽をカバーでなく、オリジナルでやり遂げてしまったなんて、これはもうマンガ家の余技ではない。まあだからと言ってプロとしてどれほど通用するのかと言うと、それも怪しいかもしれないが。
全体的に70年代ロックのテイストで作られている。面白いのは恋愛の歌がほとんどないということだ。音の面では青年時代をしているのだけれど、言葉ではしっかり中年しているというのが、また今の私にはしっくりきてしまう。だから、何度でも聴いてしまう。
それに、韻を踏んでみたり、かけ言葉のように歌詞が歌われているとそれだけで心地よくなってしまう。最近のラップなどの取って付けたような韻の踏み方よりよっぽどしっくりくるようにおもうのだが、どうだろうか。
そして、浦沢がやはりマンガ家だなあと思うのは、この限定版には「反省記の男」と題されたハードカバー(!)の本が付いていることだ。中身はなんのことはないレコーディング記録をまったく味気ない記録と浦沢の絵で1冊の本にしてしまっているのだ。
70年代に一生懸命ロックを聴こうとしていた世代の21世紀の歌と言っては言いすぎだろうか。
グータララ、スーダララのメロディー
★★★★☆
音楽趣味の漫画家が、作品が売れたお陰でCDが出せる…と言う側面はあると思いますが、(実際それはあると思うし)「20世紀少年」11巻初版に付いていたCD、ケンヂ作「ボブレノン」がいたく気に入っていたので購入しました。声質、歌いかた、歌詞の面など、漫画家でビートルズマニアの、ますむらひろしさんと共通する感じがあります。多少くもった声でプロの歌手とは違うのですが、魂はきっちり入っている。色々な音楽を聴いて、今それが噴き出している。そんな感じ。一曲目の「洪水の前」なんてかなりお気に入りです。 ラスト曲ボブレノンのバンドバージョン。エンディングの白井'ムーンライダーズ!良明氏の斜め45゜あたりからやって来るギターソロはたまらんです。 20世紀少年ファンなら、ケンヂのアルバムとしても聴けるかも。
浦沢さんにはあと二枚位、アルバム作って、アコギがしゃがしゃかき鳴らしながら全国ツアーやってもらいたいです。