もう少しだ
★★★★☆
著者は妖怪や怪談の専門家。
本書は同じく集英社新書として出た『妖怪と怨霊の日本史』につづくもの。前著では平安頃までがテーマであったが、今回は江戸時代が取り上げられている。
現代の我々が抱く妖怪観と、江戸の人々の妖怪観には、実はかなりの差異がある。本書は、その点に焦点を当てて書かれている。黒田藩・本木村の化け物騒動、水戸藩の妖怪行列、1844年の狐付き裁判などを入り口にして、江戸時代の人々が妖怪をどのように認識していたか、分析しようと試みるのである。
なかなか刺激的な話であり、言われてみれば確かにそうだろうなと思う。貴重な研究であろう。
しかし、物足りない点も少なくない。事件の紹介の仕方に工夫が欲しい。全体的にまとまりがなく、分かりにくく読みにくい。分析が充分に押し進められておらず、不満が残る。もう少し頑張って欲しかった。