多くのソフトマターの教科書は、バリエーションに富んだ物質の名前と性質が列挙されるか、あるいは逆に特定の物質（例えば高分子）をモデル化するところから始まることが多い。そのため物理学を専門とする学生、特に化学や生物学をあまり勉強してこなかった学生にとっては少々敷居が高いのが常である。それに対してこのR.A.L.Jonesの教科書はわずか3ページ余りでソフトマターのオーバービューを与え、続いて凝縮系の相互作用と運動の時間スケールと言う観点からソフトマター独特の性質を記述する。そして筆を相転移に進め、物性物理学の共通の手法によりソフトマターをどのように理解するか、を提示していく。物性物理の初学者、特に実験を専門とする学生・院生がソフトマターの物理の概観を得るには最適な本である。