「手のひらの(筋)」の意味を持つラテン語palma[パルマ]から
英語のpalm[パーム](手のひら)が派生した。
他にも、palm tree(椰子、シュロ:葉の形が手のひらに似ている)。
焼夷弾の一種napalm[ナパーム]:原料に「ナフサ(naphtha)」とヤシ油を用いていることから。
ヤシ油に多く含まれている飽和脂肪酸のpalmitic acid(パルミチン酸)。
カンヌ映画祭のPalme d'Or[パルムドール]:「金のシュロ」賞の意、これはトロフィーの形から来ている。
接頭辞palpo「触れる、震える」からpalpable[パルパブル]
(触って分かる、容易に知覚できる、明白な、見え透いた)が、
他にもpalpate(触診する)、palpitation(動悸、心悸亢進)、palpus[パルパス](触手)。
「ふるえる、パタパタする」という意味からラテン語papilio[パピリオ](蝶)が生じ、
蝶が羽を広げる様から「テント」という意味が派生、
今では英語のpavilion[パヴィリオン](催し物の仮設大テント、転じて展覧会の展示場)となっている。
イヌのパピヨンは耳が「蝶」の形だからpapillon(仏語)、などなど。
著者の一人は古代言語愛好家・サイエンスライターとのことであるが、
著者らの語彙の豊富さには本当に感心する。
英単語学習という目的からすると本書の欠点は、
医学に興味がないと効果が半減してしまうこと、だろうか。
また、そもそもの話として、英単語の「語源学習」がどの程度有効なのかが、
実はまだ筆者は良く分かっていない。
しかしまた、古代の様々な言語の歴史が深く刻まれている医学英語や化学英語といった世界ならば、
語源学習はかなりの効力を発揮できるのではないか、と直感的には感じる。
そして英単語の語源は、語源辞書を引けば分かるものも多いが、
それらがどう有機的に繋がっているか、他にどんな派生語があるのかなどは、
やはり解説がなければなかなか分からない。
なお、長々とレビューを書いたものの、実は本書はアマゾンでは手に入りにくいです。
それなりに版は重ねているので、大型の書店などで求めるとよいでしょう。