セールスからカルトまで
★★★★☆
現代の日本語訳は、「説得の力」となり、題名はこちらのほうが適当だと思う。というのは、私が読んだ限りでは、この本は、だまされないようにするにはどうすればいいか、というより、セールスからカルトまで説得の方法論はほぼ同じということにウェイトが置かれていると思うからである。
説得の方法論が何か、乗りたくないときに乗らないようにするにはどうすればいいか、が書かれている有益な本だが、『クリティカルシンキング』シリーズや、『マインド・コントロールとは何か』(西田公昭著 紀伊国屋書店)のほうが個人的には面白いように思うので、星1つ減らして、星4つ。
セールスマン必読の「説得の科学」
★★★★★
人はどういう時にどのように説得され思考操作(Mind Control)を受けるかを、豊富な心理学実験、著者の体験、実例から科学的に取り上げた素晴らしい教科書であり、インパクトは大きい。特にセールスに身を置く人には開眼の思いが伴う必読の書である。当然著者は、セールスも詐欺も説得という点で同じテクニックであり、それを何の目的に使うかの差だと捉えている。
白状すれば私は本書を原書で読んだので、翻訳の質を語る資格は無い。ただ訳本の表題はやや一般受けを狙い過ぎたと私は思う。原題はThe Power of Persuasion = 説得力 で、真面目な心理学の本である。
他人は騙され易いが自分は騙されない、他人には災害が及ぶとしても自分は大丈夫だという非合理な信念が人間にはあることを、幾つかの心理学実験で証明している。これは多くの読者にショックのはずだ。
セールスの定石10項目が面白い。その第1は、客に得を与える時は一括より分割した方が評価されるから、オマケが有効であると。第3は、逆に損は一括の方が呑み易いから、自動車のオプションは別売りより一括売りの方がよいと。
著者らが包丁の訪問販売と、自動車販売を体験して、セールスのテクニックを調査した詳細な記録があり、セールスマンには必読の部分だ。918名が集団自殺した宗教団体の死に向かう全員集会のテープが収録されており、信者達がどのように思考操作されていったかが迫力をもって語られている。
最終章では、セールスマンに不要なものを買わされたり、詐欺に遭わないための心得が述べられている。
わかっていてもダマされる。潜入リポートが新鮮
★★★★☆
著者自身がアメリカのキッチン用品の販売員となる訓練をうける潜入取材を通しダマされる心理をユーモアたっぷりに展開。著者の調査によると手口を知っていても、知らなくてもダマされる率はほとんど変わらないとか‥トホホ。しかし、知ることからさらに一歩進んで訓練を積むとダマされる率も低下するという。カルトに取り込まれる心理もセールスにとりこまれる心理もマインドコントロールというと大げさだが共通の部分があることがこの本によってわかる。