難しいテーマを身近な具体例、平易な文章でまとめた良書。
★★★★★
命の大切さを考えてゆく最初のきっかけとして、現在しばしば行われている「いのちの授業」を取り上げています。「命は一つしかないから大切なのか」「死ぬのが怖くないからいのちを大切にしないのか」「命のバトンの話は十分に有効な話なのか」これらの話の限界と問題点を指摘しています。いのちの教育には数学や自然科学のようにはっきりと答えられる正解はない。しかし、人それぞれに違った形であるだろうが、「いのちの大切さがある」のではないか、としている。「いのちは大切に思えない」という人もいるだろうが、そういった人たちが存在することを受け入れた上で、そういった人が周りの人を傷つけないようにしてゆくべきだと筆者は述べている。
いのちの教育のゴールは、人(自分および他者)を傷つけないことである。人は苦しみがあると人を傷つけてしまう。苦しみは無くならないが、苦しんでも人を傷つけずに済むためには「時間、関係、自律」の3つの柱が必要だという。
この難しい内容をお雑煮の餅の美味しい食べ方、ワールドカップのジダン選手、SMAPの歌、赤鼻のトナカイといった身近な具体例で説明され、さらにホスピス医としての経験談も交え、そしてさらに哲学知識で解説しています。この内容には納得するしかありません。
筆者の他の書籍を読んだり、講演を聴いてみたりしたくなりました。
中学生でも読める良書
★★★★☆
「いのち」はなぜ大切なのか。そんな問いに、あなたならどう答えるか。著者と共に悩み、考えながらよんでいける良書。
命の大切さを伝える授業の問題点を挙げていく前半を読みながら、ホスピスで勤務する著者の命への深い洞察が伺われる。
中盤からは、認識論を軸として、「苦しみ」とどう向き合うのかについて書いている。「苦しみ」とどのように向き合うのかということと、命を大切にするということが深く関わっているからである。著者によると、希望がある、それとかけ離れた現実がある、だから、苦しみがある、他人や自分を傷つける、命を大切にでいきない。という考えがあるようです。おだやかに生きるために、時間、関係、自律の柱が大切だということも言っています。
この本を読んで、命の大切さとは、一人一人個別なものであって、共通した答えはないと感じた。しかし、自分にとっての幸せをつねに考えることは大切だと改めて感じた。