食にまつわるエッセイは「食べてみたい」と思わせるのに、レシピが無いのが多くてあっても簡単なものですが、この本は違います。

「これは、ぜひ食べてみたい！」と思わせる文章と、次のページにはそのレシピが写真つきで載っていて、教えてもらっていいのかしら、と得した気分になります。

料理人養成の教室を主宰する著者が、市販の調味料を使ってあれこれアレンジしているのが斬新ですし、もちろん見映え良くしかも簡単そうなのでおもてなしにも使えそう。話題になりそうな隠し味も満載です。

特に気になったのは、チリソースとグレープジャムのミートボールソース。この商品そのものを手に入れて味を再現してみたい、と思わせるレシピでした。
これは料理家としてのみならず、おいしいもの好きという味覚の鍛錬によるひらめきなのかな。

市販品やお取り寄せ品でおいしいものができるなら、何もかも一から手作りにこだわらずに、構えずに、という著者のスタンスも良いです。
おいしいものを発見した時って、これをあの人に教えてあげたい、食べさせたいって思うはず。この本はそんな風に教えてもらってる感覚です。

プロフィールを見ればちょっとやっかんでしまいそうなセレブリティ。
でも本を読んでみると、結構親近感を覚えちゃう、そんな感じの女性です。

料理教室や食べ物自体に対するコンセプトが一貫しているからブレが全くないし、しかも美的センスも食べ物のセンスも抜群。
普通ならこんな本、手に取ることないんですが意外とはまっちゃいましたね。

そんな中で一番ひかれたのがお気に入りの調味料や食材の紹介。
中には「うへぇ〜、こりゃ高すぎるな〜」ってのもありますが、この値段でそんなに品質がいいならちょっと試してみたいな、って感じのものが目白押し。
で、その調味料やら食材やらを使ったレシピを次のページで紹介してくれてて、ますます「こりゃゲットするっきゃないじゃん」と思わせるあたりはさすが。

でもでもでもでも・・・。
食のプロを目指す人たちのための料理教室はやっぱり別世界の趣きだわ。
こういうところに平気で飛び込んでいくのってかなりの自信家か、じゃなきゃ勘違いした人じゃないと無理だと思う。

井上絵美さんの待望の新刊は、一冊で五通りの楽しみがつまっています。お料理のレパートリーを増やせる！レシピがいっぱいあります。それから、生活を豊かに彩ってくれるお取り寄せ情報。キッチンに立つのが楽しくてしょうがなくなるような便利なお道具のご紹介。レストランガイド、これがまた女心をくすぐる絵美さんテイスト。そして、五感を磨くヒントがそこかしこに隠れているエッセイ。
それにしても、食べ物ってこんなに美しかったんだ、といつもその盛り付けには心奪われてしまいます。まるで美しい夢を見ているようです。

優しいベビーピンクの表紙は、手に取った時から、幸せ感がたっぷり。
内容は、お取り寄せからスーパーで簡単に購入できる食材まで、幅広く網羅したレシピ。
（どれも簡単そうで、おしゃれで、美味しそう）
そして、毎日を楽しくする食器や調理道具の紹介と使い方。
著者の感度の高いアンテナに引っかかった、食に関するありとあらゆることがたくさん
書かれていて、楽しい。
全てを真似るのではなく、生活の彩をちょっとだけ変えていくヒントに。