アストル・ピアソラがタンゴの新たな潮流としてモダンタンゴを模索し、
ついにバンドネオン、バイオリン、ピアノ、ベース、ギターからなる
五重奏団という構成に辿り着いた事実は多くの方がご存知かも知らない。
五重奏団を最良のモダンタンゴ形態と考えたピアソラは
生涯で2度に渡り五重奏団を結成し、
ダンスミュージックに過ぎなかったタンゴを
芸術の域にまで高めたといわれている。
しかし、当然だがそんなピアソラも始めから
五重奏団の考えを持っていたわけではなく、
試行錯誤の挙句誕生した賜物なのであって
九重奏というコンセプトを持っていた時期もあった。
元来古典タンゴの形態はオルケスタティピカと呼ばれる
11人編成のオーケストラによる演奏が主流だったので、
ピアソラが九重奏のコンセプトを持ったのは
ごく自然な流れなのかも知らない。
前置きが長くなってしまったのだが、
小松亮太はこの時期のピアソラに焦点を当て本作品を作ったようだ。
確かに九重奏で望む本作品は、彼のルーティンバンド「ザ・タンギスツ」
に自身のバンドネオンの師である、ポーチョ・パルメル等を加え
「小松亮太&スーパーノネッツ(九重奏団)」としてトラックしている。
五重奏団を模索する中、オルケスタティピカと五重奏団の間で
一瞬の輝きを見せた九重奏団。この音をあなたはどう聴きますか?
※モダンタンゴ奏者によるオルケスタティピカの演奏としては
ファン・ホセ・モサリーニによるホルトネオ1900を
お聴きになるとよいでしょう。
小松氏のタンゴは、ラテンサウンドを、ロマンチックに、
やわらかに表現した、シャンパンの泡のよう。
この1枚で、「小松タンゴ」にひたすら、酔ってください!