電探の必要性を叫んだ潜水艦長
★★★☆☆
橋本艦長の体験、危機に直面した場合の決断などを期待していたが、本書紙面の半分以上を占めて潜水艦戦の史実を淡々と語られているのに閉口した。もちろん史実を語るのは必要なことであるが、さすがにず〜っと史実では読者も飽きてしまう。そろそろ限界なので読むのを止めようかな?と考えましたが後半には貴重な体験談があったので、最後まで読んで正解でした。
その装備の有無によって、盲目の人間と目の利く人間との戦いとまで言われた新兵器「電波探信儀」の必要性を叫ぶ記述が非常に多いのが印象的でした。我が方の電探装備が著しく遅れたために歴戦の艦長(中佐級)のその殆どが、いち早く電探を装備した敵によって艦を特定され、一方的な戦闘で撃沈の憂き目に遭っているのは周知の事実です。
彼の最後の乗艦である伊五八潜には八木式アンテナを備えた高性能電探が装備され、その威力は本文途中から劇的な違いとなって発揮される。敵機、敵艦よりも一歩早く探知して急速潜航、避退出来るようになっているのである。これが生き残れた理由の一つであるとも語っておられ、いかに電探がこの戦争の帰趨を決するものであったかを再認識した。
原爆を運んだ米重巡「インディアナポリス」を雷撃、撃沈するまでの一部始終と、回天による1万5千トン級の大型水上機母艦撃沈の模様など大戦果で最後を飾る。通称マルダイこと人間魚雷の「回天」。これを搭載し、悲壮な覚悟で一撃必沈に燃える若者たちを送り出した橋本艦長の心の内は察するに余りある。彼らの遺書もいくつか紹介されており、この時代の若者の強靭な精神、清純で濁りのない心に改めて感動します。