生きることを深く見つめるために
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本書は60項目の「励まし」に通じることばが文学作品から選び抜かれている。むき出しの激励のことばではなく、一歩退いて軽妙で気の利いた表し方に心惹かれる。
「私は青空とひかりを眺めるだけで、もう幸福だった。麦畑を渡る風と光の香気の中で私は至高の歓喜を感じていた」(坂口安吾)…放心もまた青春の至福の姿と言えよう。
「顔面の構造は神の成功の紀念と見られると同時に失敗の痕跡とも判ぜらるるではないか」(夏目漱石)…この作りそこねの乱雑な状態を楽しもう。
「人間には、人と人のあいだ、自分と世界のあいだで生きる以外の生き方はない」(木村敏) …人間、ひとりぼっちはありえない。
「人間が何かに出会い、感動する。その感動の元をたどっていった時、その核のところには、肯定の光景があるのではないだろうか。肯定の感情が世界を覆う、そのことを感動というのではないだろうか」
(太田省吾)…心に響く、「涙に正直であること」「幸福いろいろ、不幸さまざま」この「感動」をあなたに伝えたい。