最高のシューベルト
★★★★★
田部京子の代表作。第20番が好き。最高のシューベルト。
総合的に見て非常にレベルの高い曲集です。
★★★★☆
自分の感想では
ソナタは星4〜5
さすらい人は星5つ
即興曲は星4つ
楽興の時は星4つ
です。
総合的には全体的に非常にレベルの高いものと考えます。
彼女のアプローチは、よくある内面への耽溺を全面に押し出すものではなく、
一歩置いた感じのいくらか地味で繊細かつ力強い表現が感じられます。
タッチ・テンポ共にかなり安定してますので、どれも聴いていて非常に心地よいです。
ただ、今回のディスクで聴く限り、彼女のタッチ・響かせ方などの音作りは、
スタインウェイではなく、ベヒシュタインかベーゼンドルファーで威力を発揮するのではないかと漠然と感じました。(特に即興曲D899の3番変ト長調など)
演奏はブレンデル、シフの系統に繋がる、楽譜を研究し尽くした理知的なシューベルトが楽しめる逸品と考えます。
21番のみ☆5つ
★★★★★
☆5つは21番ソナタに関しての評価。
シューベルトの最後のソナタには、アファナシエフのロッケンハウス盤(新盤はダメだ)や内田光子の名演があるが、田部のものが一番気持ちよく聴ける。まず、内田盤は凄すぎて精神的にしんどい。リヒテルなどより遥かに上であり、芸術的な追究はおよそ他の演奏者を寄せ付けない。その点ベストは内田だろうが、リスナーをも寄せ付けない気がする。
こういう物言いはいかがなものかと自分でも思うが、シューベルトの奇跡のような傑作にとって、もう少し「親しんで」聴ける演奏をと思ってしまうのだ。これは怠惰な精神のなせる業かもしれないが。
アファナシエフも内田に比べれば可愛げがある。まあ、それは内田より追究が浅いということでもある。
そこで田部だ。これは、いつでもいつまでも聴いていたいと思わせる名演なのだ。
田部盤には、偉大な作品を鬼の形相で追究する大ピアニストの影はない。ただただ、シューベルトの奇跡が、そして人間存在の悲しみが図らずももれ出てくる。内田のは、その悲しみが実存的な苦しみにまで達する。繰り返すが、しんどい。しかし、それは決してやり過ぎということではない。聴く者の心の弱さの現れであろう。
偉大な演奏は内田のほうである。しかし、心弱き凡夫の一リスナーである評者には、内田のあまりに深い追究は正直言って辛い。
田部の21番を推す。しかし、これ以外はそれこそ平凡である。他にいい演奏がある。
よって、このセット化はあまりよろしくない。単品で求めるべきであろう。