平易な言葉で書かれた本作は、とにかく分かりやすく、かつての巨大組織陸軍が太平洋戦争で歩んだ道筋をダイジェストに伝えてくれます。綺麗事ばかりだとか都合のよいエピソードの選りすぐり、個々の苦痛がまったく書かれていないなど批評の槍玉はいくらでもありますが、本作の書かれた時代を考えれば、これだけのことを書いたこと自体、当時としては画期的であり、その視点は今日的に見てもいささかの歪みもなく受け入れられる普遍性を持っています。
陸軍と海軍を明確に分けなければ絶対理解できない太平洋戦争を、その基本に忠実に、ことさら本巻では海軍の「攻勢終末点」をキーワードに明確に解説しています。マレー、蘭印、比島からビルマ、ニューギニアにいたる緒戦の成り行きが、何度読んでも飽きない文体で書かれています。