現実にあったらいいな、がつまった作品
★★★★★
隅田川心中に続いての本、とても楽しみに待っておりました。
まず、イラストに関してはそこまできらりきらりと目立つようなものではありません。
本当に平凡な、それでいて日常の美しさの書き表し方が美しいと思います。
内容は個人的にはもう言うことなしで一つ一つの作品にたうみさんのしっかりとした想い、そして時代背景や物語背景がしっかりしているせいか、キャラクターがなんだか実現しているようなイメージで読み進めていくことができます。5つのストーリー中現代ものもありますが、流れがゆっくり感じられるせいか、隅田川心中でも感じられたなんとなく昭和なイメージが今回もふんだんに感じられます。
また、短編を疎遠とされている方にも是非読んでいただきたい、まるで小説を読んでいるような心理描写と内容を見ることができるので、短編ながらも1つ1つを十分に楽しむことができます。
表紙にもなっているこちらは学生時代から熟年時代へと両方のストーリーが描かれていますが、どちらも必要不可欠のもの。
すべて読んだ後今回の題名どおり、「恋と罪」が全体の統一テーマになっているような印象を受けました。
らぶらぶ!というのではなく、ひっそりと恋をする、そういうゆっくりしたコミックです。
エロ・鬼畜やラブラブな恋愛目的の方にはぜったいにお勧めできませんが、日常のなかのこんなのあったらいいな、をお求めの方には隅田川心中共に是非是非お勧めしたいです。
虜です。ほんと罪だわ。
★★★★★
この作者は、天才だと。ここまで一貫して「自分の奥なる哲学みたいなもの」を描ける人は、不遜ながら、そうそういないなと思ってしまいました。心の動きからくるドラマなので、一見、静の印象をもたれるかもしれないけど、「底辺に潜んでいる心の襞」を、ちゃんとドラマに成しているのが、とても素晴らしい!胸にゾワッと熱のような痛いものを抱えて読んでしまう。いちいち作品が美しい。作者の登場人物に投影する精神みたいなものが、複数の短編作品のキャラによってレベルの差こそあれ、内なるところで、自己否定があり、でもどんな設定でも「他者への愛情」を一番にしていて、それが作品の美しさになっていると。不満が一つ。「絵に描いたような」の続編があったけど、ボツになったので掲載できなかったとのこと、もうぜひぜひ読みたいですっ!!
待ってました!
★★★★★
センスがいいなあ、と思う。
画面構成も、セリフの入れ方も、その言葉選びも。
表題作。1ページ目の柴田の少し物憂げな表情と、『俺達の街には米軍基地があって......』というト書きだけで
充分にその世界観が伝わってくる。一気に引き込まれる。
しかし何と言ってもお薦めなのは、『2/3の世界』
図書館司書に恋をした青年が、彼の読む本を追いかけて借りていた。
でもその青年は亡くなっている事が、作品の冒頭でほのめかされていて......
はだかの背中がこんなに哀しいと思った事はありません。一見いい加減に見える若者達の思わぬ純情に、
何度読み返しても涙がこみ上げ、泣いてしまいます。短いページ数でその世界を描ききったみごとな作品。
短編集なので作品の出来には多少のバラつきがあり、おっさんがおっさんに見えないという事もありますが、
それを差し引いても私は星5こを付けたいです。
好き
★★★★★
前作の『隅田川心中』でガッツリはまって今作も購入させていただきましたが、やっぱり良い!
作品の醸し出す雰囲気が大好きです。
まとまりよく
★★★☆☆
全体的にまとまっていてとても読みやすく、雰囲気も素敵でした。
が、カラーが一緒の作品ばかりでした。
とくに「キツツキのノック」は、他の作品に比べ正直薄味で、一話にまとめるか、もう少し何か要素をいれ読みごたえが欲しかったです。
主人公の心理描写よりも、詩的な言葉を入れたために感情移入しづらかったというのもあると思います。
雰囲気作りだとわかるのですけどね。
第三者(同僚の女性)から見た主人公像に違和感を覚えました。
言うほどそんな排他的な性格には見えなかったので。
この話のせいで一冊一気読みをした時中だるみを感じました。
前作での「なでしこギャラクシー」がコメディーでアップダウンはげしかったので比べたとき余計そう感じたのかもしれません。
表題作品と先生ものと図書館の話は好きです。