インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

USAカニバケツ

価格: ¥1,554
カテゴリ: 単行本
ブランド: 太田出版
Amazon.co.jpで確認
ゴシップ・サブカルチャーを通して観察する米国社会 ★★★☆☆
 米国在住の評論家・コラムニストである著者が、映画・テレビ番組・ポップミュージックといったサブカルチャーを通して米国社会を語った1冊。『底抜け合衆国』(洋泉社)の姉妹編的な位置づけらしいが、本書はゴシップ・芸能ネタ・スポーツといった軽めの話題が中心となっている。
 素材は軽めだが内容は必ずしも軽くない。アーカンソー州の田舎町で起きた殺人事件で、周囲から浮いていたオカルトマニアの少年が地元の警察によって「犯人」に仕立てられ陪審員裁判で死刑判決を受けるまでを追ったドキュメンタリー映画。わずかな酒代と引き替えに浮浪者に殴り合いや危険なスタントをさせる地下ビデオ(制作者は逮捕されるも全く反省なし)。事実を歪めた美談や原作と異なるハッピーエンドを乱発するハリウッド映画の末期状態…。一方で、2流スター同士のカップルのおバカな新婚生活を実況中継する番組や日本のバラエティ番組の模倣作品といった、素直に(?)笑える話もある。
 本書が凡百の芸能・サブカル本と違う点は、ゴシップや芸能ネタを扱いつつも、その背後に横たわる構造的な問題までをしっかりと見据えていることだろう。例えば、野球・アメフトからプロレスまで米スポーツ界で頻発するドーピング問題や薬物中毒・暴力事件についても、好感度・視聴率だけが全ての商業主義や、学生時代からスター選手を貴族扱いの純粋培養で育てた挙げ句、まともな教養も社会常識もない人間にしてしまうシステムといった因子が陰にあることを、著者は見逃さない。
 最終章は異色のメディア関係者の列伝となっており、名誉毀損事件で受け取った賠償額がわずか1ドルだったコメディアン・ロドニー=デンジャーフィールドの訃報で終わっている。人に歴史あり。本来芸能ネタには疎い私にも、楽しく読めて、しかも考えさせられる1冊だった。
地続き感覚で読める ★★★★★
この本に書かれているのはスポーツから有名人、ゴシップなど便宜的にカテゴライズされてはいるが要は"アメリカの実際のトコロ"だ。
草の根的なタブロイド記事を拾い、それを切り口によく知られている、例えばニュースで流れているようなアメリカ人像とはかけ離れたものを教えてくれる。どちらも本当のことだろうし、良し悪しの問題ではない。ただ、筆者の「これだから米国は」とただバッシングするような嫌味な感じのしない書き方には私達にリアルにアメリカを見せてくれる。それだけは確か。
至高のジャンク・フード、みたいな… ★★★★☆
 「いつの間にかポテチを一袋空けてしまった、ゲップフィ…」というのが率直な読後感。カニバケツとはバケツの中のカニの群れが互いに足を引っ張り合い、結局一匹も脱出を果たせぬ有様を意味するそうだが、本書には米国庶民の、このバケツカニたちのように情けなくショーもないドタバタをめぐるジャンクな話題が満載。
 ただし話題はジャンクだが、志は高い。あとがきにある通り、米国在住で「ウォール・ストリート・ジャーナルよりスーパーのレジで売ってるタブロイド紙を読み、CNNより『コメディ・セントラル』の冗談ニュースで政治経済を知り、アメリカを底の方から見ている毎日」を過ごす著者が、「幻想になりつつあるアメリカン・ドリームを、スポーツや芸能やTVが庶民に提供し続け、欲望だけが肥大化する現状、そして、その中で戦っている人々の姿」を伝えようとした、骨のある一冊。「痛ッ、痛ッ…」と頭を抱えつつも、決して天使のようではないトラッシュな人々にいつしか共感し、愛しさがこみ上げてくる。
 正直なところ、本書所収の記事1本1本を初出の雑誌で見かけても、私は読み飛ばして忘れていただろう。でも、「量は質に転化する」。本書全体から、これまで十分に伝えられてこなかった米国がリアルに立ち上がってくる。
 いやあ、でも、米国って国はホントに…
はんぱではない ★★★★★
アメリカ研究者」とよばれるひとがいる。
彼らは細かいことにはやたらくわしい。「蛸つぼ」系、である。そんなひとたちほど、著者がいうように、アメリカに行っても大学の紀要か「ニューヨーク・タイムス」しか読まない。日本の「真実」が「うわさの真相」や「ナイタイ」にあるように、アメリカの「真実」もまた、二流・三流の世界のなかにある。その実相を僕らはほとんど知らない。研究者やジャーナリストのほとんどは、ニューヨークは好きだがノースダコタには興味がないのだ。本書の無数のエピソードはそれぞれつながりがあるわけじゃない。でもどっちかというと「ダメ」なところで共通しているし、著者はそれを断罪するのではなく、暖かい目線をおくってるようにおもう。九・一一以後、やたらアメリカ社会を断罪する、切ってすてて溜飲をさげるような記事や本が、ちょっとはやった。そういう反米主義は結構だが、マイケル・ムーアしかり本書の著者しかり、もうすこしアメリカ社会に内在した、腰が据わった本が必要じゃないかとおもっていた。本書はそれにあたる、いろんな分野の人がよんだほうがいいと思う。おもしろいし。
掃き溜め話の中に、キラリとひかるアメリカが混じっている不思議な書 ★★★★☆
 冷戦後唯一の超大国となったアメリカ。政治・経済・文化の中で図抜けた地位を占めるこの国についてはどうしても華やかな面ばかりが強調されて伝わってきがちです。本書は、その国の薄汚く、常軌を逸した人々をこれでもかという具合に取り上げたワイドショー的一冊です。一日で読める頁数とはいえ、気分のふさぐ話が続くので一気に読むのは憚れます。

 例えば、視聴率至上主義のテレビ業界のあきれた番組「フィア・ファクター」。素人が様々な我慢ぶりを競い合うという内容ですが、「400匹のネズミ風呂に入る」「ボウリングで倒せなかったピンの数だけ生きたカブトムシを食べる」といった悪趣味ぶり。

 またアメリカの保守層の教条主義的な側面を伝えるアーカンソーの事件。8歳の少年が殺され、犯人として高校生ダミアンが逮捕されます。しかし彼が犯人であるという確たる証拠はなく、調べていくとどうやら彼が保守層の反感を買うような、黒Tシャツを着てメタリカを愛聴するGOTH少年だったことによるつるし上げの様相を呈してきます。裁判はダミアンに不利なまま進み、彼は今も獄中にあるとのこと。

 それでも、痛ましさの中にもアメリカの力強さを感じさせるエピソードがいくつか紹介されています。
 義父にレイプされ、10代でホームレスとなったフィービー・グロックナー。彼女は18歳の時に「このままではダメだ」と一念発起し、持てる絵の才能を生かして奨学金を得てカレッジに進学します。やがて自己の体験をもとに醜いものも隠さない冷酷なリアリズムに満ちた「ある子供の生活」というコミックで世に出ます。機会があればぜひ読んでみたいものです。

 またダリル・ハンナの復活に至るこの10年のお話も、ちょっといかれた女の子だと思っていたハンナが急にとても愛らしく見えてくる内容です。

 清濁あわせてアメリカ社会を複眼的に見ることの出来る、奇妙な魅力をもった一冊です。