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完訳マルコムX自伝 (下) (中公文庫―BIBLIO20世紀)

価格: ¥1,200
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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マルコムのイメージが変わる。 ★★★★★
下巻ではネイション・オブ・イスラムの指導者イライジャ・ムハマドとの間で次第に対立が生じ、独自の黒人民族主義団体を立ち上げていく過程及び、メッカ巡礼、アフリカ諸国への訪問などによって徐々に思想を変化させていく過程が描かれている。上巻に引き続き、本書を貫くものは「人種融合」をほのめかす白人リベラルの偽善やワシントン大行進などに象徴される黒人公民権運動に対する手厳しい批判である。

白人の望む黒人像を演じることによって人種統合を目指したのがキングであるとするならば、そのような戦術を徹底して拒否し、黒人の自我を追求したのがマルコムであった。だが、本書を読んで気付かされることは、マルコムの戦術は決して暴力革命路線ではなかったことである。彼のブラック・ナショナリズムとは決して暴力革命による国家転覆を狙うものでもアフリカ帰還を目指すものでもなく、黒人2200万人の勢力を結集して投票行動によってアメリカ政治・経済・社会を変革しようとするものだったのである。日本でも「過激な暴力革命主義者マルコムX」というイメージが流布しているが、それは彼に批判的な白人黒人やメディアによって形成され、普及してきたものだということがわかる。公民権法が制定されて40年以上が経過するもなお未解決の黒人問題。本書に収められたマルコムの思想がリアリティを帯びて迫ってくる。
エピローグからわかるマルコムXの緊迫した最後の数年間。彼の真意を決して誤解してはならない ★★★★★
下巻ではネイション・オブ・イスラム教団に入信したマルコムXが、尊師であるイライジャ・ムハマド氏の篤い信頼を得て、次々と教団を拡大していく様子が描かれる。

ところが、マルコムXの、そのやけどするほどの熱い情熱が周囲との軋轢を生み、ついには、その師であるムハマド氏との決別という衝撃の結果を招く。

彼はそれでも自分自身の信仰という火を絶やすどころか、イスラムの聖地メッカへの巡礼、そしてアフリカ訪問と、その行動力と見識の広さはある意味、師を超越していく。

下巻の3分の1は、マルコムXの自伝をインタビューから編集したアレックス・ヘイリィによるエピローグで占められるが、このエピローグが非常におもしろい。正直、自伝からはあまり伝わってこないマルコムXの緊迫感、神経疲労、または憤慨、やるせなさがとてもよくわかる。

思うに、彼はハスラーという渡世人の世界でつちかった非常に現実的な人間であり、自分の信じることに超特急のように前進するタイプで、そのあまりの性急さに、周りがついてこれないのだと思う。しかし、とは言うものの、現状のアメリカでの黒人の地位を見てみると、60年代から決して大きく改善したとは言えないところがまだまだ存在するのではないか。

マルコムXはえてして暴力と直結して考えられることが多いけれど、彼が本当に達成したかったことについて、我々は決してそれを誤解してはならないと思う。
巨人の最期 ★★★★★
下巻ではついにマルコムが独自の道を歩む姿を描く。
自らがおかれた危機的状況を鮮明に描く部分もさることながら、アレックス・ヘイリィによる長大なエピローグも興味深い。
黒人指導者として ★★★★★
下巻では黒人イスラム教団で精力的に活動する中で次第に彼の尊師で
あるイライジャ・ムハマドと対立していく様子が語られています。
そしてついには脱退。その後、真のイスラム教を求めてメッカへ旅立ち
ます。その旅の中でマルコムは白人に対する今までの考えを改めます。
そして旅から帰ってきた彼は、自ら新しい組織を作ります。
最初の頃、過激な発言も多数あり、彼の考えはかなり凝り固まった
考えであるなと思いましたが、彼に惹きつけられる人々の気持ちが
分かるような気がします。マルコムはだいぶ前から自分は長くは生きられないと思っていました。
そして自伝が完成する頃には自分はこの世にいないだろうと言っていました。それが本当になったのが残念です。
この本を読んでいて、彼がどれほど熱意を持って黒人の人種問題について取り組んでいたのかが伝わりました。
モハメド・アリとの交流なども書かれていて、
マルコムXという人物を知る上でお薦めの本です。