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アフリカ 苦悩する大陸

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東洋経済新報社
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貨幣でしか経済は成立しないのか? ★★★★☆
アフリカ 苦悩する大陸 ロバート・ゲスト 東洋経済新聞社 2008

経済という立ち位置からのアフリカ観察。
歴史と市場経済という流れの中で翻弄されるアフリカ大陸がある、勝手に国境線を引かれて、部族対立や民族紛争に導かれていく。レアメタル、ダイヤと言った資源のために進出する所謂先進国。
市場経済という文脈の中では貨幣が最大の力なのは間違いないのだろう。そして、その貨幣という麻薬にも似た物質のために血が流され不正が行われていく。GDPでは計算出来ない幸福度は常に度外視されて発展開発という流れに身をゆだねざるを得ないのはアフリカも他の諸国も同じなのであろう。
果たして本当に先進国と言われる国々の人々ははアフリカの貧困や紛争を解決して同じ人間として地球上で存在したいと考えているのだろうか?
そんな疑問を抱いた書であった。

第1章 吸血国家―エリートによる、エリートのための独裁主義
第2章 ダイヤを掘る、墓穴を掘る
第3章 「眠れる資産」が繁栄へ道を拓く
第 4章 セックスは死と隣り合わせ
第5章 宿怨の三つの温床―部族主義、派閥主義、人種主義
第6章 どうする?援助と自由貿易
第7 章 でこぼこ道と盗人警官
第8章 ハイテク技術は「貧困」を救えるか?
第9章 南アフリカは「希望の星」になれるか?
結論 一歩ずつ確実に―「豊かな」未来へ向けて
アフリカについて知りたいのなら読むべき ★★★★★
アフリカがどうして発展できないのかという問題を、南アフリカ駐在のジャーナリストが細かに書いた本。
私のようなアフリカに対する知識ゼロの人にもわかりやすいように、非常に細かいところまでやさしく書かれている。
特に著者の専門でもある経済的な視点からの切り口はすばらしい。
かといって堅苦しい本ではない。
ときどきジョークが混じっていたり、話題が脱線するので気軽に読める。

この本を読むと、アフリカが貧困にあえぐ理由はアフリカ各国の政府が良くないからだと分かるだろう。
しかし著者はアフリカに生きる人々の力強さに未来を見ている。
ちょっと楽観的かもしれないが、直にアフリカの人々と触れた著者の言葉だから重みがある。

翻訳の質も問題ないので、気になった人は買って損はしない。
アフリカのいまについて嫌というほど分かる。
アフリカの問題と可能性 ★★★★★
私はアフリカ3ヶ国で計10年以上過ごしました。今まで多くのアフリカ関係本を読みましたが、本書が一番共感できるものです。アフリカ自身が示す可能性と、アフリカの政治指導者が起こしているシリアスな問題。そしてグローバリゼーションをネガティブなものとしかとらえず、アフリカの人々の潜在利益を奪っていることに気がつかない先進国の活動家。
私にとってもアフリカで、政府を通す援助を行うことの非効率性と、住民への直接投資の効果は疑う余地はありません。アフリカを考えたい人が、第一に読むべき本は本書でしょう。
アフリカの現状と展望を、独自の切り口から論じる点が新鮮な書籍 ★★★★★
アフリカの悲惨さは既に広く知れ渡る事になりましたし、それを訴えるだけの本なら数多くあります。ただしこの本が今までの本と違うのは、アフリカの現状と展望を経済、科学等を重視した独自な視点で分析し、今後の展望に関して決して少なくない希望も与えてくれる事です。以下、私が本書で斬新に感じた内容を4点ほど紹介したいと思います。
 まずはアフリカの「眠れる資産」に関する分析。本書では、アフリカの都市部に限定しても、アフリカ全体のGDPの約3倍に相当する資産が眠っている事、にもかかわらず土地の財産法等に関する制度が未発達な事が記されていますが、これは逆に、適切な制度を設ければ、アフリカも十分発展につながる事を示しています。
 2つ目は援助と自由貿易に関する分析。ボツワナの経済成長はあまり注目されませんが、援助や貿易を有効に活用すれば、ボツワナのように豊かになりますし、逆に舵取りを間違えれば、ザンビアのように破綻国家への道を邁進する結果になります。
 3つ目は科学技術。優れた科学技術を活用し、教育制度を整備すれば、人々の医療や通信等を充実させる事ができますが、逆に指導者が科学技術を敵視すれば、ザンビアのように飢餓が拡大し、南アフリカのようにエイズ対策が遅れる結果になります。
 4つ目は、エリートの過度な被害者意識の危険性。チャールズ・テイラーやロバート・ムガベのような残忍な独裁者を賞賛し、自国の問題を他国に責任転嫁する国がどうなるかは北朝鮮を見れば一目瞭然ですが、従来のアフリカ書籍にはない指摘だと思います。
 適切な舵取りを行いさえすれば、アフリカも十分豊かになる事を、本書から読み取る事ができますし、そのための方策も数多く記されています。アフリカを成長させるにはどんな点をどう改善すべきなのか。本書は多くの人に薦めたい、第1級のアフリカ書籍です。
アフリカの可能性を伝える一冊 ★★★★★
 エコノミストの記者による主に(サハラ砂漠以南と言う意味での)南アフリカ
での取材を元にして編まれた一冊。

 著者が前書きで「アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ」と記した
とおり、本書の中には明日への希望を持って生きる人々と、政府の腐敗・怠慢・
能力不足etc...から来る貧困や健康不安にむしばまれる人で一杯です。

・口約束、長老のさじ加減でどうにでもなる仕組みを改め止め、法を整備しよう
 と動き始めた(マラウイの場合)。これが導入されれば、今ある資産(土地)
 を使って融資も受けられて商売が出来るようになって貧困から抜け出せる。

・AIDSの本拠地とも言えるアフリカにおいても、発症率を劇的に抑えることが
 出来た(セネガルの場合)。

・部族抗争、人種差別の真実。それは植民地政策の名残(ルアンダや南アの場合)。

・役人は賄賂大好き。ビールを運ぶトラック。受けた検問40数回、目的地に
 着いた時、荷台には出発時の三分の一しか荷が無かった(カメルーンの場合)。

 結果が出ている解決策を見てみるとそこには・・・1)必要とするところに必要
なものだけを直接届ける。2)援助に優先順位をつける、3)これで僅かな費用で
効果十分、という事実が浮かび上がります。

 彼の大陸の実情を知れるのはもちろんですが、援助大国として(その費用は
税金から出ているのです)真に求められてる中身は何なのか?且つ効果のある
それはどんなものなのか?ということを知ることも出来る一冊です。

 原著の発行が2004年、本書の出版が2008年、適宜訳者によってデータがアップ
デートされている点も「今」を伝えるノンフィクションものとして好感が持てます。