「平和」を肯定的に捉えられる一冊。
★★★☆☆
簡単な概要を紹介すると第一部でコスタリカがおよそ「軍隊」と呼べる物を持たなくなった歴史を
第二部でコスタリカは実際「平和」という物の中に居るかどうかを前者はある程度俯瞰的に後者は著者の
体験談をふんだんに織り交ぜながら紹介しています。
特に自分が大事だと感じたのは筆者及びコスタリカの人々が捉える「平和」の考えが多くの日本人達とは
大分異なっているという事です。またこれを多少なりとも取り入れていくのが必要だとも感じます。
それは著書の中でも言われていますが日本で平和は「反戦」、「第二次世界大戦の否定」を立脚点として
教育される節がありますが、コスタリカでは「自由」、「文化」、「尊厳」、「民主主義」という肯定的
な物を軸として考えていく傾向があるようです。これも筆者の言葉になりますが前者は「否定の否定」
後者は「肯定の肯定」といった所です。この考えにならない限りやはり目標となる物を見定められず、
「平和」というのが単に軍隊を持たず戦争状態に無いという事に落ち着いてしまいます。実際コスタリカ
は軍隊を持たない事を通過点にして、これ自体は軍隊の無い後付けの理由でもありますが医療費教育費を
無料にし一歩ずつですが「平和」に近づいていると思います。またこれはコスタリカが割と先進国、スペイン等ですが、に長く統治されていたおかげといったら怒られますが、この影響で早くから上流層には
少なくとも「人権意識」が芽生えていたのも一因でしょう。
筆者は必ずしも日本の目指す所がコスタリカにあるとは言わずまた実際達成出来るとも言っていませんが
「アドバンテージ」はあるとあとがきの中で言っています。それは教育制度や医療制度等社会指標は日本以上に先進国並なのに、コスタリカが未だ国費の大半を海外から、特にアメリカ等先進国やNGOの資金頼りで賄ってる「発展途上国」だからです。その面では日本は達成出来る可能性の高い国の一つでしょう。
ですがこれは「価値観の転換」を必須としています。人権意識、環境意識、文化意識等々資本主義の中に
生きる、特に日本は最近まで最前線を突っ走って来ましたし、まだまだ資本主義の先頭に立つだけの実力
は持ち合わせていますのでここで一歩引くのは大変な事でしょう。ですがあくまで一つの候補としていつか、多くの西欧諸国のように、かつて繁栄を極めた国々のように引き際を考える時が来たならばお手本の
一つとしてコスタリカは重宝すると思われます。しかしながらコスタリカは余りに先進的、何しろ「軍隊
」と呼べる物を廃止、これは他のレビューでも言われてますがしかも半世紀掛けてゆっくり、偶然や個人
の政治的判断、行動や地理的要素、米州機構という国際的枠組という中で軍隊を一時的にでも持たない方が有利に運ぶ、またそもそも持てるような状況ではなかったという日本とは異なる時代の一時期を除いて全く違う歴史の中徐々に推し進めて来たので、もし目指すと決心しても全く違う結末になるかもしれません。しかも現状日本は領土的にも文化的にも侵略を受けている最中なので現時点では皆無でしょう。これもコスタリカが「中米連邦」たるものにかつてあったのと多く違っています。つまり文化的差異、領土問題が比較的両者で程度が雲泥の差があるという事です。
また「平和」について考えた時コスタリカは決してユートピアでもパラダイスでも無いという一点だけは
付け加えたいと思います。政治の腐敗、道端での賄賂の横行、以前としてある差別意識、日本と比べ物に
ならない格差社会等々およそコスタリカが抱く平和という価値観からは程遠い状況です。ここは日本スタイルの「戦争の否定」が「平和」というのと違った視点で語りたいと思います。ただ先程も述べましたが
自由、民主主義、人権という普遍的価値を根拠にしている以上は少なくともより悪い方向へは進んでいかないように思いますし、国民はそれを嫌うでしょう。著書の中でもこうした価値観が多く出きてますが
これは著者が、最初は決してこうした価値観は持ち合わせていなかったと本人が懐述していますが、哲学的思想をコスタリカ留学時に強制的に学ばされたのが主因だそうです。ですがこれはコスタリカの人々の
多くが持ち合わせている物だとも著書では述べられています。
この本ではこれ以外にも多くの事を考えさせられるのであくまで一つの通過点として読んでみてはどうで
しょうか。
もうちょっと現実的に物事考えましょうよ。
★☆☆☆☆
周辺国の状況、歴史的背景、それらがすべてコスタリカとは違うのに、
それを日本に当てはめようとするのは、正直とても滑稽です。
こういう人にありがちなのですが、
「現地に行きました、現地の人に話し聞きました。だからジジツです!」と
した本です。
周辺国との国際関係・軍事的緊張度の度合いなど、
「非武装」を語る上で重要な条件を意図的に無視・曲解しています。
といいますか、非武装の理想モデルとしてコスタリカをとりあげるなど、
とっくに論理破綻してるというか、時代遅れなんですよ。
こういう口当たりだけはいいことで「非武装」を説くことで
自分は平和に貢献してると思いたいのでしょう。
(それを読んで、共感した人も同じ)
日本で非武装を主張するよりも、現実に「戦争状態」にある国で、
それを主張するべきでしょう。平和のためにはそれが最優先です。
でもやりませんよね。しようともしません。
それがこういうエセ平和論者の限界です。
軽やかなフットワークで平和産業を
★★★★★
コスタリカが軍隊のない国家であることについては、すでに何冊も本が出ていたので、日本の平和運動の中でもよく知られていた。
ところが、本書を読むと、まだまだ知られていなかったことがおおいのだと痛感させられる。軍隊をなくすにいたった歴史的経過、偶然的事情や、軍隊がない状態でコスタリカ政府や人々がどのような努力を積み重ねてきたかなど、知るべきこと、考えるべきことが多い。
著者は、軍隊のない状態が平和であるとは考えていない。その国家、社会がどのようにして平和政策を実現し、平和の文化を紡ぎ出していくのかが重要なのだ。
ここが肝心だと思い、著者をお招きして講演会を開催した。5月29日・八王子、30日午後に船橋、夜に飯田橋、と3回の講演会である。コスタリカ研究を始めた経緯・裏話や、コスタリカの人々との対話から得たものなど、さまざまな興味深いお話だった。
著者は、いま、コスタリカ・ピースツアーを企画・実践している。平和を学び考えるための平和産業としてのピースツアーだ。フットワークの軽さが著者の何よりの魅力といえよう。
丸腰でやっていける理由の分析が十分でない
★★☆☆☆
コスタリカは 1948 年に軍隊をなくして「丸腰」になった.その歴史・国民性などを分析し,軍隊がなくてもやっていけるのか,ほんとうに軍隊がないのかを検証している.
コスタリカが軍隊なしにやっていけるのは国の規模や米国との関係がうまくいっているからだろう.米国との関係についてはこの本でも分析しているが,十分とはいえないようにおもえる.また,なぜコスタリカが周辺国とちがうみちをあゆむことができたのかも十分にあきらかにされているとはいえない.
あとがきで非武装化に関して,国の規模・歴史もまったくちがい米国からの物理的距離もまったくちがう日本について「現状としては日本のほうがはるかに有利な状況にいるはずだ」と書いているが,これはまったく説得力がない.
ラブ☆コスタリカ!!!―若さと熱意で押し切るコスタリカ論
★★★★☆
本書は、日本唯一のフリーランス・コスタリカ研究家である著者が
日本人にはあまりなじみのない、コスタリカを紹介するもの。
コスタリカが積極的非武装中立を宣言し、軍隊を放棄するに至った経緯や
それを支えるコスタリカの人々の気質を紹介をしたうえで、
民主主義の浸透による死刑の廃止、人権教育の浸透といった光の部分だけでなく
汚職の横行やプランテーションでの環境汚染など
今日のコスタリカが抱える影の部分をバランスよく描きます。
軍隊や戦力の保持をめぐる記述については
やや法学的な厳密さを欠くようにも感じたのですが、
全体を眺めると、そうした細部を忘れさせるほどの
筆者のコスタリカへの熱い想いが伝わり、押し切られ、。
読み終わるころにはコスタリカに行ってみたくなること間違いなし☆
ベネズエラ、キューバ、ペルー、ニカラグア
など、あまりに個性的な中南米において
エコツアー以外ではあまり目立つことのないコスタリカ。
しかし、軍隊や死刑を放棄し、それを維持しようとする姿勢は
集団的安全保障や、死刑や矯正などの問題についての
先入観・固定観念を見つめなおすきっかけになると思われます。
そうした問題に関心を持っている方や
これからコスタリカへ行く予定のある方などに強くおススメです★★