自ら見聞した説得力
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改憲・護憲、武装・非武装、平和・戦争などに関するネット上の言説を開陳している人たちのほとんどは、実地を知らない。戦争をやっているところに足を運んだこともなく、その実態を知ることもなければ、軍隊がない国の苦悩や実情を知ることもなく、ただただ机上の空論ばかりを展開している。
この本の著者は、軍隊がないと言われる27の国をすべて自らの足で回り、調べ、簡潔にまとめている。
非武装国家をすべて自らの目で見て確かめているところに、この本の説得力がある。
おそらく日本で類書はないだろう。
世界の非武装の潮流を知るには最適の一冊。
国家は軍隊を必要とするという俗説は誤り
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本書執筆の契機はスイスの弁護士バルビーが「軍隊のない国家について教えてくれ」と問われたからであるという(p.B)。著者もバルビーも「軍隊のない国家」を27としている(ただし著者はバルビーのあげているハイチをおとし、代わりにルクセンブルクを入れている)。コスタリカだけが例外的に軍隊をもたない国なのではない。日本は憲法9条があるが、この27カ国に入っていない。当然である。27カ国はいろいろな切り口で分類されている(pp。243−247)。非武装憲法をもつ国(リヒテンシュタイン候国、コスタリカ共和国、キリバス共和国、パナマ共和国)、軍隊がもともとなかった国(アンドラ公国、サンマリノ共和国、モナコ公国、アイスランド共和国、ルクセンブルク大公国、ヴァチカン市国)、軍隊が国民を殺害したため廃止した国(コスタリカ共和国、ドミニカ国)、外国軍によって軍が解体されて無い国(グレナダ、パナマ共和国)、集団安全保障体制があるので軍を不要としている国(セントヴィンセント・グレナディンズ、セントクリストファー・ネヴィス)、外国との自由連合協定下にあるので軍を不要としている国(ミクロネシア連邦、パラオ共和国、マーシャル諸島共和国、クック諸島)等々。この他、トゥヴァル、サモア独立国、ナウル共和国、モーリシャス共和国、モルディブ共和国、ヴァネアツ共和国、セントルシア、ソロモン諸島、ニウエ。もっとも国家とは何か、軍隊とは何か、定義が難しいことは著者もわきまえている。いくつあるのかではなく、非軍事化に向けた運動、理念、考え方が重要なのである。国連加盟国は現在(2008年6月)192カ国であるから、世界の国家の7分の1ほどで軍隊がないのである。そして重要なのは、時間とともに徐々に増えていることである。日本の憲法が世界の他の国の非軍事化に影響を与えてない現状を著者は嘆いている。もっと国際的に普及すべし、輸出すべしということである。(上記のうちクック諸島とニウエは国連に加盟していな)。自身のあげた27カ国は全てまわってヒアリングをしているところが凄い。日本政府が9条を守らないのであれば、市民は無防備地域宣言などで抵抗するのがよいようである(pp。253-254)。
注意が必要
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著者が述べるように、この27カ国の内には他国や国際機関の軍隊が常駐している国が含まれるし、事実上の軍隊を所有する国家も含まれている。
また、「軍隊を持たない太平洋の島々」が「日本軍」に蹂躙されたと描きながらも、
ヨーロッパのモナコ公国については「静穏の内に占領された」としか書かれておらず、
ユダヤ系の国民が収容所で死亡するにいたった経緯などは描かれていない。
軍隊が無いかどうか、読者は自分で確認するべき
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たとえばモナコ。
3万3千人の人口に対し、100人の憲兵隊がおり、
その比率は、日本における現役自衛官を上回っている。
コスタリカは武装警察としているが、対戦車ロケット砲などを装備しており、
ドミニカ内戦では占領軍に参加している。