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少年裁判官ノオト

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本評論社
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「非行少年」という言葉では括れない,名前を持った,言葉を持った,少年たちの眼差し. ★★★★☆
 エピソードの羅列という構成にもかかわらず,淡白
な井垣の叙述にもかかわらず,本書は,とても強いイ
ンパクトを持っているように感じられます.それは,
いうまでもなく,神戸事件の核心的な,少なくとも最
もバイアスの緩い事実が,特別な誇張もなく並べられ
ているからです.他のエピソードも,少年司法,家事
事件の解決に重要な示唆を与える資料となって良いは
ずなのですが,その価値は,A少年の記述に押されて,
若干,見えにくくなってしまっているようです.

 『少年裁判官ノオト』というコンセプトが貫かれて
いる,という見方もできるのかも知れません.けれど
も,仮にそのような企てがあったのだとしても,それ
は多くの読者に気付かれないまま,本書は,「A少年
の審判を綴った本」として,色分けされてしまうのだ
ろうと思います.結局のところ,落ち着きのなさが気
になってしまう,そんな読後感でした.星が1つ減っ
ている所以です.

 もっとも,A少年に関する部分はもちろん,井垣が
詰め込んだいずれのエピソードも,そこに現れる彼の
思想も,内容においてこれほど優れたものに出会うこ
とは,そう多くはありません.少年事件の大枠を知り
たいという方の多くは,手続の詳細というよりは,
「家裁では,裁判官が何を語り,少年はどう応えるの
か」というところに関心を持っているのでしょうから,
そうしたニーズに応えるという意味でも,本書は貴重
な存在だといえそうです.

 少年司法は,少年を甘やかしているのか,厳しさを
伴っているのか,あるいはそのような対立とは無縁な
のか,厳罰化が一段落したその後,保護主義への揺返
しが起こるその時まで,僕たちは,答え知っておかな
ければならないはずです.井垣の前に立った少年たち
が,そのヒントを与えてくれます.
少年審判について興味深く学ぶ ★★★★★
少年審判について、多くの事例が書かれており、現代の少年犯罪を考えたり、
その処遇について考えたりなど、本書は様々な活用方法がある。

まず、始めに少年審判の流れについて説明してある。
聞いたことがある言葉であっても、その言葉の意味がよく分からないことが多い。
「不処分」「保護処分」「試験観察」などたくさんの言葉が出てくる。
この表では説明が分かりづらいと思うが、読み進めていくと事例などを通して
言葉の解説がついているので、おおよその言葉の意味は理解することができる。
「自動自立支援施設」という言葉はよく聞くが、言葉の意味が分からない。
どういった施設だろうか、と疑問を抱いたがこの用語についも理解できるようになっている。
「保護観察」という処分があるが、保護司と呼ばれる人が少年の世話をしている
ことがある。
保護司の真摯な姿勢には、ますます感心されされるばかりだと感じた。

少年が犯罪を犯したときに、どのような処分が適切か、裁判官、家裁調査官、
場合によっては鑑別所のスタッフなどが一丸となって考える。
思春期という難しい中で、今後の少年のことを考え適切な処分(処遇)を考えることは
非常に大切だということを痛切した。

少年犯罪が多く発生し、今の社会はどうなってしまったのかと考えてしまうことがある。
本書を読み、そういった問題についてより深く考える契機となることもあるだろう。

子どもに関わる人が読むといいと思う。
また、非行少年を減少させたいと思う人が読んでもいいと思う。

被害者と加害者、双方の視点で書いてあるところもあるので、
両方の視点から考えて読破することも有意義であろう。
少年の立ち直りに本気で取り組む ★★★★★
著者は、神戸児童殺人事件の「少年A」の審判を担当した井垣康弘氏。
小宮信夫編著『安全はこうして守る』(ぎょうせい、2007年)の中にあった井垣氏の論稿読んで、より知りたいと思い読みました。
「少年A」だけではなく、井垣氏が出遭った数々の少年のエピソードが載っています。
実は、未成年だからといって「更生」ばかりを言う今の少年裁判のあり方には疑問を感じていました。
しかし、裁判官を退官後も弁護士として、裏切られても少年に伴走して立ち直りを支える井垣氏と周囲の人たちの姿には感動すら覚えました。
おすすめです。
「少年A」の心理分析には刮目! ★★★★☆
 神戸市須磨区で起きたあの事件の担当裁判官となったことから一般的な注目を浴び始めた著者。
 当該事件担当になったのは偶然との事ですが、本書後半に綴られている回顧録(エッセイ風)を読むと、それ以前から周囲の抵抗に負けず種々の努力実践をなさっていた事がよく判ります。

 私が女だからか、「少年A」の行為に関する次のような心理分析には衝撃(=新しい知識)を受けました;

 「少年は不幸なことに中学生という年齢(肉体)に達していたにも関わらず、
いまだ性と暴力が未分化であり、
この年代の通常の男子のように異性に性的魅力を感じることが出来ず、
暴力行為に対して性的快感のようなものを感じてしまっていた。
(発達が完成された一形態としての性的サディズムではない)。

この事自体については同じ男性(=鑑定医)として同情を禁じ得ない。」


 他の書物でも読みましたが、人間の脳においては性と暴力が同じ部位でつかさどられているそうです(嘆)。
(男性だけ?女性も??)

 ともかく、法曹関係者(予備軍)にはおすすめです。
貴重な裁判からみた司法の生の声 ★★★★★
 平成17年に退官したばかりの元裁判官である著者が、メールマガジンで配信したものに手を加えたエッセイスタイルの本。

 神戸の少年殺人事件を担当した裁判官ということで、そこに興味を引かれ購入したがおもしろい。

 神戸の事件だけでなく、著者が担当したその他の事件や少年裁判の審理、処分、矯正過程の実態、我々が普段耳にすることのない部分そのもので、読んでいてあきがこない。

 そして著者をはじめとした、少年の矯正に真剣に取り組む暖かい人々がそこにいることに驚くし、感動もしてしまう。

 お薦めです。