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真田信繁―「日本一の兵」幸村の意地と叛骨

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 宮帯出版社
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従来の真田史研究の一到達点 ★★★★☆
三池氏の前著である真説・智謀の一族 真田三代 (新書y)を訂正加筆された本です。
内容的には(章や記事の掲載順が変わっているものの)前著から大きく外れるものではありません。例えば、真田氏の祖先についての記事は、真田昌幸 (人物叢書 新装版)の引用を削った分一般向けとして分かりやすく、スリムな内容となりましたが、研究関連の情報量が少なくなってしまい、「研究書」と言うにはやや不完全であると言えるでしょう。
タイトルに真田信繁と冠するだけに、冒頭は信繁の記事になっていますが、(言葉は良くないかもしれませんが)前著『真田一族』の書きなおしである分、やっぱり「真田信繁の本」とはいえないです。信繁のみでこれだけの文字数を持つ本(小説以外)を一冊書くにはだれにとっても苦労ではあります。本著においても、もう少し信繁に絞った記事が増えてくれると、(タイトルにこだわるとすれば)良いのではないかと思います。
従来の視座からの真田史研究はこの本と柴辻『真田昌幸』を読めば大体把握できると思われます。
新鋭・三池純正氏が真田幸村の謎と真実に迫った意欲作 ★★★★☆
小生が待ちに待った三池純正氏の『真田信繁』の本である。真田信繁は、御存知“真田幸村”のことである。真田氏に関する資料は極めて少なく、世に真田の名をあげたのは『立川文庫』や『真田三代記』によるところが大きい。『真田三代記』は、赤穂浪士の討入り事件からしばらくあとの江戸中期に書かれたと推測されている。三池氏の持論の武田の『甲陽軍艦』と同様に、執筆時期にタイムラグのあるものは鵜呑みにできない。

読者というものは、どうしてもおもしろい読物のイメージに支配されがちだ。例えば、猿飛佐助や霧隠才蔵、三好清海入道らの架空の人物で夢をふくらませてしまう。池波正太郎の『真田太平記』や尾崎士郎の『真田幸村』らの名歴史小説でも、長年、読者に植えつけられた“ヒーロー伝説”の呪縛から、容易に解放されていない。

本書は長年にわたって読者に植えつけられた架空の世界に、真っ正面から戦いを仕掛けたもである。『真田幸村』の虚構の部分が歴史書の中でも一人歩きしているきらいがある。おそらく、そういうイメージで書いた方が売れる本になったことだろう。それをあえて『真田信繁』という本のタイトルにしたところに、三池氏の覇気とチャレンジ精神を感じるので、小生は“三池さん、天晴れ!”とまず申し上げたい。

大坂の陣で家康の本陣まで脅かした信繁だが、それ以前の史実は、時におもしろみに欠けるどころか、まったくつまびらかではない。それこそ歴史の本質である。歴史には空白とおもしろくない事実がしばしば同居しているのだ。そのことをを著者の三池氏に成り代わって申し上げたい。

真田家の一級資料として有名なものに、長野市松代支所で編纂された『真田家文書』(全3巻)がある。編者の米山一政は、松代藩が保管していた約3万点に及ぶ古文書の中から、藩庁資料(行政関係)と、真田家の家文書(真田家の代々の当主とそれに関係していた戦国武将や徳川家から頂戴した書状)に分類している。この『真田家文書』には“幸村”の名はなく“信繁”の名が残っている。三池氏は、この『真田家文書』とで解明できない事蹟を、戦国期の他の一級資料も研鑽することで、真田の真実と隠された信繁像に肉薄しようとしている。

三池氏の第1章「真田の里」、第2章「六連銭ー真田氏誕生の謎」、第3章「真田信繁登場」、第4章の「豊臣政権と信繁」は、少々、アカデミックな筆致で書かれている。読んでいて内容と蘊蓄はあるが、ミーハーな“歴女”と呼ばれる女のコや歴史マニアではない一般読者は、退屈するのではと心配してしまった。第5章の「関が原合戦」、第6章「大坂の陣前後」、第7章「決戦大坂の陣」は、三池氏の従来の持ち味がよく出ていて楽しめる。本書は編集者の努力で、多数の写真や図録が入れてあり、とてもよい研究本だと思う。これは小生の提案だが、今後の仕事としては、終章の「真田家の意地」をさらに掘り起こした一書を書き残すことも大切である。上田城が破壊され再築を許さなかった、幕府の背後に潜むものをあぶり出し、徳川家が目指した幕藩体制のシステムを解明することも意義がある。伊達家の筆頭家老の片倉小十郎が信繁に心酔し,伊達家が信繁の子をかくまったエピソードもまた、仙台へ取材へ行き、さまざまな資料と格闘すれば、これも一冊の本になるだろう。

最後にひと言、今後の三池氏のためにあえて言わせ頂くならば、読者諸氏も、本書を読んで、疑問点や意見があればそれをビシバシ三池氏にぶつけることは、彼のためにもあると思う。三池氏にはさらによいテーマに挑戦して頂き、三池氏を一流の歴史研究家&大衆作家に育てようではありませんか・・・。